「勝ちゃええんや!」

 試合前、恒例となっている声出しでルーキーの辰己涼介選手が言った言葉である。「たとえ一人がミスをしても全員でカバーしてチームが勝てばいいんです」と続けた。

 まさに今、イーグルスは全員野球で交流戦を戦い抜いている。

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 さて、シーズンが始まったばかりと思っていたら既に60試合以上が終了し、ここからが更に正念場になってくる。今回は、今シーズンから1軍投手チーフコーチを務めている伊藤智仁コーチに今のイーグルスの投手陣について語ってもらった。

一番好きなおにぎりの具は「鮭」の伊藤智仁コーチ ©河内一朗

伊藤智仁コーチが語る今のイーグルスの投手陣

河内「今の先発投手陣をどう見ていますか?」

伊藤コーチ「開幕から則本、岸がいない状況の中、辛島、美馬がよく頑張ってくれています。若い先発ピッチャーも投げて結果が出たピッチャーもいれば、出なかったピッチャーもいました。出なかったピッチャーは何故なのかという事を本人がしっかり考えてやっていかないといけないので、そういう意味では色んな経験になっていると思います」

河内「リリーフ陣はどう見ていますか?」

伊藤コーチ「松井をはじめ、宋、ハーマン、ブセニッツ、青山、森原、高梨、というところが非常に安定した活躍で、2枚看板がいない中で彼らに何とか勝てる試合を拾ってもらっています。彼らなくしては今の(イ―グルスの)状態はないと思いますね」

 6月12日現在、松井選手は33試合(リーグトップ)、宋選手30試合(リーグ3位)、高梨選手29試合(リーグ4位)とパ・リーグの中でもトップクラスの登板数である。リリーフ陣の働きがあるからこそ、終盤の粘り強さにも繋がっているのだろう。

「十分すぎる働き」をしている4年目右腕

 そして個人的に注目しているのが、昨シーズン7月に育成選手から支配下登録された4年目右腕・石橋良太選手。今シーズンはリリーフで結果を出し、現在は先発を任されている。先週の巨人戦では勝ちはつかなかったが7回6安打2失点と先発としての役割を果たした。

昨年育成選手から支配下登録され先発の一角を担う石橋選手 ©RakutenEagles

河内「石橋選手は伊藤コーチの中でどう映っていますか?」

伊藤コーチ「球も強いですし良いシュート、良いカットボールを投げる事が出来ますね。ブルペンのちょっとしたアクセントというか、安定したリリーフ陣の中でもロングリリーフが出来たり、痺れる場面でのワンポイントリリーフも出来るイメージです。今は先発に回って自分の役割をしてくれていますし、十分すぎる働きをしてくれていますね」

河内「前回登板はカーブも駆使していましたが……」

伊藤コーチ「先発になってから、シュートや速い変化球だけでは中々長いイニングはしんどいのでカーブや落ちる球種もトライしていますね。最初は上手くいかない事もありましたけど、段々と結果も出るようになってきて今は自信をつけているんじゃないですかね」

 石橋選手は1軍のバッターとの対戦経験を通して貪欲に挑戦し続けているのだ。「育成契約になって悔しい思いもしたので今はチャンスをもらっている分、やるしかないです」と話す。きっと石橋選手の中で守りに入っても何も新しいものは生まれない思いが強いのだろう。