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母校・二松學舍は「帰る場所」

鈴木選手が140m弾を放った位置から見た二松學舍高グラウンド ©桝本壮志

 そんな野球道を説いてくれた恩師を慕い、誠也は監督の元を訪ねて来るという。

 市原監督に「最近はどんな会話をされるんですか?」と尋ねると、師は遠い目をしながら静かにこう語った。

「母校は帰る場所でもあると思うんです。プロ野球選手というのは、良い時はいろんな人が周りに集まります。だから誠也には、ケガをしたり精神的に落ち込んだ時こそ母校の意味があるんだよ。調子が悪くなった時だけでいいから連絡してこいよって。そんな会話をしていますね」と。

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 金八先生の贈る言葉にはこんな続きがある。

「もし君たちがその旅の途中で道に迷ったら、どうか私を振り返って下さい。私はねぇ、この荒川のほとり、桜中学のこの教室にずっといます。そして次の目標が見つかったらまた私に背を向けて、どうぞその目標目指して懸命に歩いて下さい」

 市原監督のその言葉から、まさにそんな想いを受け取った母校巡りだった。

 今年新たに、その逞しくなった背中に『背番号1』をつけ躍動する鈴木誠也。その『1』は、広島カープ・鈴木誠也の第2章を告げる番号であり、彼が7年ぶりに背負う二松學舍時代の想い出と、恩師の掛け替えのない教えが詰まったエースナンバーでもある。

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