2017年、『けものフレンズ』を大ヒットさせ、一躍その名を知られるようになったプロデューサー、福原慶匡。現在も株式会社ヤオヨロズの取締役を務める傍ら、アニメ・音楽プロデューサー、芸能事務所の運営など多彩な活躍を続けている。また、コンテンツ研究のために慶應大大学院の博士課程に在籍し、研究者としての一面も持つ。

 そんな福原プロデューサーがかねてより様々な場所で発言して来たのが「中国のアニメ産業の興隆・日本のアニメ産業のピンチ」についてである。制作本数も大きく伸び市場規模を急速に拡大させる中国のアニメ産業、そしてその一方で様々な構造的問題を抱える日本のアニメ産業について、福原氏は警鐘を鳴らし続けてきた。

 そんな福原氏から見て、日中のアニメ産業の最前線では今何が起こっているのか。現在発売中の『週刊文春エンタ! アニメの力。』と連動して、変わり続ける中国のアニメビジネスについて語ってもらった。(全2回の1回目/#2に続く)

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福原慶匡氏

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中国で『進撃の巨人』が敬遠される理由とは?

――まず基礎的な質問なんですが、そもそも今でも中国では日本のアニメは見られているのでしょうか?

週刊文春エンタ! アニメの力。』はローソン限定で発売中

福原 今、中国でアニメを見る場合はビリビリ動画が一番認知度が高くて、そこではまだ日本のアニメがたくさん見られてます。ただ、ビリビリ動画のメインターゲットってほぼ10代なんですね。中国でも30代くらいの世代は日本のアニメや漫画で育った世代なんで、日本のことがすごく好きです。でも10代の人たちは日本のコンテンツが最高ってあんまり思ってない。

――やはり中国国内の作品の方が、中国の若者にも受け入れられやすいということですか。

福原 日本ってアニメの歴史自体が100周年とか迎えちゃってる状態で、お客さんと作り手がどんどん深いものを作って超ハイコンテクストになってるんですよね。だから、その前提を知らない中国の若い子が見てもついていけない。もっとシンプルな表現のコンテンツの方が、中国の国内向けにはいいんです。あともう一個の壁が、やっぱり表現規制ですね。エロもグロもダメだし、体制批判もできない。赤い血がダメだから血を黒く描き直したりとか、体がちぎれちゃうのもダメ。『進撃の巨人』みたいな、弱い立場の人たちが団結して強いものに立ち向かうという表現が
国民に影響を及ぼして政府に歯向かってきたりしたら嫌ですもんね