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――もう全部大振りで当てようとするんですね。

福原 だから僕らから見て目につく事業をやった人っていうのは場外ホームランを当てた人だけで、そのほかの人たちはいなくなってるんです。日本では電子マネーにしてもPayPayとか色々あって、それぞれ「交通系はウチね」みたいな感じで細かく棲み分けてるじゃないですか。日本人が1億人以上いるとして、そこに一個しか電子マネーがなかったとしたら、そこが抱えているキャッシュって莫大なものになるから、海外と向き合って東南アジアくらい取りに行く予算も出ると思うんですよ。でも今の分割されてる状態だとけっこうきつい。だけど中国はもうアリペイかWeChatペイだけなんです。そこは本当に国民性だと思います。

 

いい人がいたら即とらないと逃げちゃう

――江戸時代の幕藩制と、中央集権の王朝との差みたいな感じですね。

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福原 本当にそうですね。日本だと起業してこけた時に「アイツ失敗したらしいよ」って言われちゃいますけど、中国では言われないし気にしないんですよね。勝った時にでかいのは事実なんですけど、そもそもあれだけ人が多いからちょこちょこやっててもダメで、突き抜けないと勝てないんです。イノベーションに向いてる国だなと思います。大体の奴らが事業計画なしでスタートしてるんで、実際には事業を起こした人間のほとんどは消えてますよ。

――福原さんが今中国でやっているスタジオも、事業計画はないんですか?

福原 僕らの仕事だと、今主要メンバーの4人中3人が日本人なんで、ほんとだったら人事計画を立ててここで何人とろうとかやるんですけど、でも中国のルールで仕事をすると、まずいい人がいたらもう即とらないと逃げちゃう。人件費が月50万円って言われると高いなって思うけど、人件費50万の人が月に100万円稼いだら利益は50万なんだから、コストパフォーマンスとしてはいいよなという感じになりますね。

#2に続く)

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 福原慶匡プロデューサーが“中国産アニメ”や『ULTRAMAN』についても語ったオリジナル記事「もはや中国は日本と組むメリットはない」は『週刊文春エンタ! アニメの力。』に掲載されています。

福原慶匡(ふくはら・よしただ)

1980年生まれ。アニメ・音楽プロデューサー。実業家。川嶋あいのマネージャーからキャリアをスタートさせ、アニメ制作に携わり、2013年より株式会社ヤオヨロズの取締役。ヒット作『けものフレンズ』のプロデューサーとしても知られ、現在も多数の企業の取締役を務める。コンテンツ研究者として慶應大大学院博士課程にも在籍。