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「命削って作ってきたんでね」小島秀夫56歳が明かす『デススト』誕生までの“誤算と孤独”

小島秀夫監督インタビュー #1

「時間とお金がかかる」は根拠のない嘘

――2019年に発売するということも、早いうちから発表されていました。

小島 『AKIRA』の年って言ってましたね(※『AKIRA』の舞台は2019年)。それは、計画なんで。うちはインディーズだから、こういうストーリーで、こういうゲームで、こういうテーマですというのをピッチしなきゃいけない。それで、たとえば映画でもいつ公開です、っていうのがわかって、初めて予算もバチッと決まるじゃないですか。それはゲームも同じで。これまでも、僕はそうした枠の中できちんと仕上げるということを続けてきました。だから、僕のゲームには時間とお金がかかるというのは、まったく根拠のない嘘なんですよ。そこは改めて言っておきたいですね(笑)。

 

――小島監督は発売前からずっと、『デススト』は「棒で戦うのではなく、縄で繋げるゲームだ」と語っていました。ただ、私も実際にゲームをプレイしてみて初めて、「なるほど、監督はこういうことを言っていたんだ」とようやく理解できたんです。となると、制作中にチームの方とそうしたイメージを共有するのは難しかったんじゃないですか?

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小島 はい。全然わかってくれませんでしたね(笑)。それは毎回そうなんですけど。

「配達するゲームなんてダメだ」と言われて……

――どのあたりが一番大変でしたか?

小島 いや、もう最初からですよ。配達するゲームなんてダメだとか。面白さがわからないとか言いながら作ってるスタッフもいました。僕には面と向かって絶対言わないですけどね。これは『メタルギア』のときもそうでしたよ。『ボクらの太陽』のときも、こんなに面白くないゲームはないとか言われてましたから(笑)。

 

――そんな中で、チームと対話しながら作っていくと。

小島 そうですね。理解しようとはしてくれますけど、やっぱりモノがないとわからないんで。世界観にしても、やっぱり頭の中は見せられないでしょ。でも、そこで折れると、普通のゲームになってしまう。わからないかも知れないけど一緒にやりましょう、と言うしかないんです。ただ、これまで一緒にやってきたスタッフは、そういう経験値が高いんで。今は何言ってるかわからんけど、そのうちわかるだろう、みたいな。

iPhoneにメモしながらストーリーを組み立てる

――そもそも『デススト』を作るうえで、最初に浮かんだアイデアというのはどういったものだったんでしょうか?

 

小島 最初は絵が出てくるんですよ。世界を繋いでいくというイメージの中で、裸のおっさんが“座礁”してくる。そんな映像と、テーマと、あとはゲーム性ですね。細かいところはまだないですけど、でもキャラクターとかは、ある程度固まって見えていました。