世界的大ヒット作『メタルギアソリッド』シリーズの監督として知られる、ゲームクリエイターの小島秀夫氏。2015年12月末にコナミから独立し、コジマプロダクションを起ち上げた同氏は、2019年11月8日、待望の新作『デス・ストランディング』(以下『デススト』)をリリースした。
設立直後のコジマプロダクションは、オフィスにパソコンすらないような状態だったという。それでも小島氏はゲームを作り続けることを決意し、独立からわずか4年弱で『デススト』を発売。再び世界を熱狂させている。
まさしく“ゼロからのスタート”となりながらも、決して消えることがなかったモノづくりへの情熱。その裏で、小島氏はどんなプレッシャーと戦っていたのか。また、新作映画だけでも年間200本は観るという同氏に、「2019年の映画ベスト5」もあわせて聞いた。(全2回の2回目/#1から続く)
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――小島監督は2015年にコナミを退社された後、すぐにコジマプロダクションを設立されました。このとき、他にも様々な選択肢があったと思うのですが、それでもすぐに「ゲームを作ろう」と決めるまでには、どんな経緯があったのでしょうか。
小島 確かに選択肢は色々あったんですけど、すぐに決めなければならなかったんで。本来なら、年齢的には引退するタイミングなんですよ。それで、たとえば大学とか専門学校の先生になって、週に2回くらい授業して、あとはラジオの番組を持ったり、エッセイを書いたり、そういった生活もできたかもしれないです。ほかにも、世界中からゲームショーに来てくれとか、そういうオファーも届くんですよ。
――なるほど。そうした道に進むことも可能だったんですね。
小島 でも、そういうのは嫌だったんですよ。やっぱりモノを作るのが好きなんで。そうなると、自分と弁護士、あとは2、3人のスタッフで独立して、それで映画を撮ったり、小さいゲームのアドバイザーやったりとか、そういう選択肢もありました。ただ、それではなかなか許されないという声がいっぱいありまして(笑)。
「独立したら失敗する」を覆したかった
――それはファンの方から?
小島 ファンとか、周りの関係者とかが、それはあかんと。今まで作ってきたぐらいのボリュームの、しかも斬新で、ストーリーもあって、ビジュアル的にも新しいゲームを作らなあかんでしょ、と。もう1つは、独立したら失敗するという風潮を何とかしたかったんです。
――独立したゲームクリエイターは成功しない、と。
小島 有名な方も含めて、世界中の人がそうなんですよ。独立して、ピッチして、出資してもらっても、最終的には失敗する。やっぱり企業に入ってないとゲームは作れないというのが定評なので。だけど、もうそんな時代じゃないと思うんですよね。なので、年寄りのおっさんが足跡を残すために、ちょっと成功しなければならないな、というのもあって。それで休みもせず、退社翌日から働いてました。