設備があろうがなかろうが、作る人は作る
――次の日からすぐにゲーム作りを始めたんですか?
小島 まずは企画ですね。機材は何もないんですけど。自分のパソコンとiPhoneにメモして。
――Twitterにも、まだ何もないオフィスに手作りのセットを組み立てて、カメラワークを確かめるメイキング映像があげられていましたね。笑ってしまうんですけど、どこかグッとくるところもあって。
2016年8月上旬の秘蔵映像。今の事務所を借る事が出来て、スタッフも若干増えた頃。まだ廊下もキッチンも会議室も執務室もないのでこの絵が撮れた。8月末に控えたマッツのPキャプ用にカメラワークと情報量を決める為のラフプリビズ。英国での撮影時、この映像をマッツに見せて演技の参考にして貰った。 pic.twitter.com/cPJHC2ePsb
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) November 27, 2019
小島 あれはめっちゃ楽しいですよね(笑)。ああいうのが面白いんですよ。設備があろうがなかろうが、作る人は作るんで。
「失敗したら社員が路頭に迷う」というプレッシャー
――機材がまったくないところからスタートした今回の制作は、たとえば『メタルギア』のときとは違う感覚だったんでしょうか?
小島 いや、同じですよ。まったく同じ。お金に関しても、『メタルギア』のときも会社でプレゼンして、お金を集めてきてたんで。それが中か外か、というだけですよね。ただ、一番大きく違ったのは、失敗したら社員が路頭に迷うということ。そういうプレッシャーは猛烈にありました。今までは失敗したら、自分だけ辞めたらいいと思ってたんで(笑)。
――コジマプロダクションには今、何人ぐらいの方が?
小島 開発が80人ぐらいで、サポートを入れると100人は超えますね。もうこれ以上は大きくしたくないんですけど。
ゲーム作りに不安は一切ない
――元々、独立したら100人くらいのチームというか、規模の会社を作ろうと考えていたんですか?
小島 そうですね。これくらいじゃないと、小回りが利かないので。ただ、100人でトリプルA(※超大作ゲーム)を作らなければならないので、それは大変ですよ。普通は200人から600人くらいで作るものなんで。ただ、今は100人を養っていかなきゃならないとはいえ、ゲームを作るという点に関しては、今までやってきたことと変わりはない。ゲーム作りに不安は一切ないんですよ。これは一番得意なことなんで。
――とはいえ、環境が変わったことで、何か違いが生まれた部分もあるのではないでしょうか?
小島 大きな会社にいたときも、毎回同じことはできなかったんですよね。時代なんか、どんどん、どんどん変わっていくものなので。毎回人も替えてましたし、チームも替えてましたし、プラットフォームも、テクノロジーも替えてきたんで。そこはもう、あんまり苦労はしないというか。人を募集して、給料を払わないといけないというのは大変ですけど。たとえば、それでレストランを経営しろと言われたら、ちょっと考えてしまうと思うんですよ(笑)。どういう料理人を雇ったらいいのかわからないので。でも、ゲーム作りの人は面接したらわかりますよね。