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日毎の感染者数に一喜一憂しても意味がない

舛添 アメリカとイタリアでは死者が急増していますよね。一方、ドイツでは死者が抑えられている。この明暗を分けた差は何だと思いますか。ドイツの医療体制が頑強だということもありますが、最大の要因はアメリカ・イタリアはPCR検査をちゃんとしておらず、ドイツは初動から徹底的にやっていたということなのです。

 ところが日本は、今この段階に来ても、PCR検査を受けるためには時間がかかっているという。感染が確認された森三中の黒沢かずこさんが良い例です。「検査を受けたい」と言っても、受けさせてもらえなかったといいます。こんなことは、あり得ないことです。

©文藝春秋

 今、日本人は、日毎の感染者数で一喜一憂していますよね。今日は100人超えた、今日は100人下回った、と。しかし、これは全く意味がありません。単に検査数に比例しているだけなので、感染者の実態が把握できていない。日本はまさに今、アメリカとイタリアの轍を踏むかもしれないのです。

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 さすがにこうした初動の遅れが致命的なミスであると政府も気づいたのでしょう。4月に入り、慌てて緊急事態宣言を出しました。

緊急事態宣言と一斉休校は“北海道のマネ”

――なぜ、政権内で「緊急事態宣言をする」という案が浮上してきたのでしょうか。

舛添 2月末、感染者が急増した北海道で鈴木直道知事が緊急事態宣言と一斉休校を打ち出し、急増していた感染者を封じ込めました。政府の緊急事態宣言は、これを模したものだろうと私は見ています。

 安倍政権が北海道の対応を参考にしているのは間違いありません。2月27日に安倍首相が唐突に3月中の全国一斉休校を発表しましたが、これは明らかに北海道ケースがうまくいったことを意識したものでした。

 鈴木北海道知事は今回の対応で相当、評判を上げました。安倍政権は支持率を上げるために「この方法は使えるな」と判断したのでしょう。

鈴木直道・北海道知事 ©時事通信社

――緊急事態宣言をすると、政府は何ができるようになるのでしょうか。

舛添 自粛要請が出せるようになるくらいで、政府ができることは、出そうが出すまいが実はほとんど変わりません。

 緊急事態宣言を出せるようにするために、政府は新型インフル特措法を改正しました。私はこの改正法自体、必要なかったと考えています。そもそも、緊急事態宣言なんて既存の新型インフル特措法の解釈を変えればできることです。もっと言えば、法的根拠がなくたって、リーダーが「今は緊急事態です」と国民に語りかけるだけで意味がある。