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“学ぶ男”大瀬良大地、恩師が贈った言葉「木鶏」に込められた意味

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/07/01
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信頼される投手であるために

 2014年、ドラフト1位でカープに入団し、1年目から2ケタ勝利を達成し、新人王のタイトルも手にした。しかし、2年目の2015年、チームがCS進出を争う中のドラゴンズ戦にリリーフ登板し、3失点。この試合に敗れたことで、カープはCS進出を逃した。

「信頼される投手になりたい」。涙のグランドから顔を上げた大瀬良は、心に誓った。2017年、大瀬良は先発で10勝をマークしたが、満足しなかった。「少しでも長いイニングを投げられるようになりたい」。そんな責任感から、彼は、自分のピッチングを高めていった。ただ、心意気だけではマウンドに立てない。大瀬良は、根拠に基づいた武器を自分に与えていった。「学生の頃から球数が多くて、打たせてゴロアウトを奪える球として投げてきた」というカットボールの質や使い方にも工夫を凝らした。真っすぐの軌道で、バットの芯をずらす。ボールのキレや曲がり幅を妥協なく追求した。

 2018年は182イニングに投げ、2019年はリーグ最多の6完投である。さらに、2020年は開幕延期の難しい幕開けにも関わらず、2試合連続完投のド派手なスタートを切った。

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 仲里が「木鶏」と書いた色紙を手渡した最初の教え子が、大瀬良大地だった。「あれ以降、教え子に頼まれることが増えました。けど『木鶏』は贈っていませんよ。そう簡単にはあげられませんね」。

「イマダモッケイ(木鶏)タリエズ」。あの大横綱が漏らしたくらいである。容易い道ではない。しかし、この精神がある限り、背番号14はどこまでも成長する。

 開幕延期、雨天による試合開始32分遅れ、エースの重圧。すべてを跳ねのける姿は「木鶏」のようであり、試合後の顔は「木鶏」とはかけ離れた柔和さであった。

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