文春オンライン

最優先すべきは“個としての仕事”…高橋慶彦がいま、選手たちに伝えたいこと

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/10/02
note

まずは「個」としての「仕事」を最優先に考えるべき

 選手は「個」。個人事業主。それでいて、チームが弱くても監督みたいに責任を取らなくて済む。だったら給料もらってる分、思い切り働くべき。取っ替え引っ替えされないように頑張るべき。逆を言うと、いまはチャンスなんです。自分なら消化試合だからとモチベーションを下げることはありません。むしろモチベーションが上がります。チャンスなんですから。メンバーが固定されて入る余地が無いような状態じゃないんですから。

 そう考えると、最近のプロ野球は少し「個」に対する考え方が緩いのかなと思うこともあります。たとえば送りバントを成功させた選手がベンチに戻る時に「ナイス」みたいな感じでハイタッチをしたりしますよね。あと、フォアボールを出す、ランナーを背負うなどの局面でピッチャー交代。そのピッチャーがベンチに戻る時にも同じような光景が見られる。自分の現役時代だと、そういう場面では誰もハイタッチしませんでした。なぜならバントは仕事で、ピッチャーの交代は「ピンチを招いた結果」ですから。ピッチャー交代に関してはそこまでの投球を労っている部分もあるのでしょうが、ピンチを招かなければ交代も無いんです。

 逆にピンチを切り抜けた時のハイタッチ。これならいいように思うかもしれませんが、そもそもピッチャーはバッターを抑えるために投げてますよね? たとえばサラリーマンがFAXを送ったからってハイタッチしますか? よく送りましたってハイタッチしますか? しませんよね? ムード作りや一体感など様々なニュアンスもあるので一概には言えないのですが、監督やコーチはそのあたりを区別して選手を教育すべきだと思いますし、まずは「個」としての「仕事」を最優先に考えるべきです。

ADVERTISEMENT

 なんだか厳しい意見を言っているようになりましたが、3連覇した時のメンバーも多く残っているカープ。まだまだ強くなれるはずです。だからファンの皆さんには、勝とうが負けようが、カープというチームを応援してほしいです。まず、野球に負けはつきものですからね。あと選手は「野球をやる楽しみ」というのをもう一度、考えてほしい。野球はすごく楽しいものです。しかも選手はそれでメシが食えるんです。だからモチベーションを下げずに、目標を持ってやってほしい。優勝争いをしていても消化試合をしていても、自分の全力を出し切ってほしい。そういう「個」が集まってチームプレイになり、それが結集することで強いチームになるわけですから。

 最後になりますが、娘が書いてくれたので自分からも書きます。自分はカープに帰りたいです。カープでコーチをやりたいです。やっぱり僕はカープに育てられた。カープが無かったら高橋慶彦も無い。恩返しの意味も込めてカープで野球がやりたいんです。僕を知ってるカープファンの方って、本当によくしてくれるんですよ。チームから離れて30年以上が経つのに、いまでもよくしてくれて温かい言葉をかけてくれる。自分の人生は、やっぱりカープ。それも「広島」。広島のカープです。ただのチームじゃない。広島という素晴らしい街にある野球チーム。あの街のチームに入ったから現在の自分がいる。広島弁はとても怖かったですが(笑)、やはり僕の中でカープは特別な存在なのです。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/39950 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

最優先すべきは“個としての仕事”…高橋慶彦がいま、選手たちに伝えたいこと

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!

文春野球コラム

広島東洋カープの記事一覧