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阪神・糸原健斗の夢を叶えた小学生6年生の想い

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/10/09
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陽翔君がなぜ糸原の夢を叶えたのか

 その陽翔君がなぜ糸原の夢を叶えたのか。ここまでの話なら陽翔君が糸原に夢を見させてもらい、希望を貰っているにとどまる。しかし、糸原はいつも頑張る理由をこう話している。「自分が活躍することで身体が大きくない子に夢や希望を与えたい」。これこそが数字ではない部分で、プロ野球選手として果たしたい夢だった。

 9月7日の夜。陽翔くんは憧れのキャプテンのホームランはみていなかった。その時間も自主練習していたからだ。練習を終えて復活弾の吉報を知ると「さすがキャプテン!」と目を輝かせて喜んだ。

 練習も一層熱を帯び、先日の奈良県大会決勝では9番セカンドで先発出場。“糸原選手が守るセカンド”を努力の末勝ちとった。チームは最終回で8点ビハインド。1点を返し2死満塁で陽翔くんに回ってきた。「みんなに繋げば必ず勝てると信じていたし、絶対優勝したかった。前の大会で負けてあんなに悔しいことはなかったから」。右投げ左打ち。お手本にしているのと同じようにレフト前に弾き返した。そこから打線がつながり結果11対10の大逆転勝ち。翌日に声が出なくなるほど仲間に声をかけ続けた。

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「これまではできないことに文句ばかり言って泣き虫でしたが、今ではいい意味で諦めの悪い野球小僧です」。嬉しそうに呆れる翼さんも、感謝の気持ちでいっぱいだという。「努力すれば結果に現れることを感じてくれて親としてありがたく、本当に人間的にも成長してくれました。何より野球が大好きになりました」。グラウンドでの糸原の姿が一人の少年をこれほどまでに変えたのだ。

 

 その競技に打ち込む姿で感動や勇気、夢を与えることが出来るプロアスリート。しかし時には、逆に夢を叶えて貰うこともある。糸原が陽翔くんのことを知ったら何を思うだろうか。今だからこそ、届いてほしい。

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