中国共産党は「邪悪な幽霊」
この日、都内某所の公民館で開かれていたのは、月に数回実施される都内の法輪功の小規模な定例集会だった。
参加者は中高年が中心で10人程度だ。中国系日本人や在日台湾人もいたが、意外にも全体の半数はネイティブの日本人だった。参加者に事情を聞いたところ、他の地域では華人系の参加者が多いが、新橋の集会は例外的に日本人が多いらしい。
「現在、新型コロナウイルスが蔓延しています。苦境にある武漢に向け、発正念(はつしょうねん)を。同時に、全世界に意識を向けていきましょう」
リーダー格の山田が、坐禅を続けながら呼びかけた。ちなみに当時(2020年2月)、コロナ禍はまだ日本にほとんど及んでおらず、ほぼ中国国内だけの問題であるとみなされていた。
やがて、参加者たちが八字の文句を中国語で唱えはじめる。
師父のお顔が光り輝いた!
「法正乾坤(ファアヂェンチエンクン)、邪悪全滅(シエオーチュエンミエ)……」
「法正天地(ファアヂェンティエンディー)、現世現報(シエンシーシエンバオ)……」
この「発正念」は法輪功の法語である。彼らの公式ページ『明慧網』日本語版の表現を借りれば、「正念を発して邪悪の黒い手と卑しい鬼を根絶し、共産党という邪悪な幽霊のすべての要素を取り除く」言葉だ。
山田のスマホから再び鐘の音が響いた。今度は結跏趺坐のまま、体の中心で両手の指を蓮華の花のように開く「蓮花手印」のポーズを取り、さらに5分の坐禅。これで修煉前の準備行動は終了だ。
一同が足を崩し、場が和らぐ。やがて、ひとりの大柄な日本人男性が立ち上がった。先日、日本国内でおこなわれたという、法輪功の大規模な講演会への参加報告だ。
準備スタッフとして加わった彼はその際、法輪功の指導者・李洪志(リィホンヂー)の姿を近距離で3回も目にしたという。
「私から50センチほど前を師父(李洪志)が歩かれたんです。パッとお顔が光り輝きました。きっと一瞬で、私の現在・過去・未来がすべてお見えになったんでしょう」
他の参加者たちが感嘆の声を漏らす。男性の話は耳慣れない固有名詞や専門用語が多く、部外者にはわかりづらい内容だったが、法輪功の修煉者同士では非常に「響く」ようだった。別の男性が声を上げる。