“藤浪で勝った”“北條で勝った”そんなシーズンであって欲しい
藤浪晋太郎と北條史也――。今年が新世代の幕開けとされるなら、先頭に立っていて欲しい存在。それは“甲子園の願い”でもある。だが、チームの快進撃をよそに、ともに9年目の今季はここまで苦戦が続いている。藤浪は自身初の開幕投手を務め、1カ月で2勝を挙げたものの登板5試合中、4試合で5四死球以上と制球を乱す場面が目立ち4月23日に再調整を理由に出場選手登録を抹消。北條は、先発出場はなくてもベンチでの声出しなど矢野監督も認める無形の貢献で存在感を発揮していたが、4月24日の練習中に左足首を痛めて抹消。皮肉にも12年のドラフト1、2位の同期が同日に離脱する事態となってしまった。
「同い年が活躍するのはうれしいですし、ファンの人も喜んでくれるので。だから、2人でヒーローインタビューのお立ち台に上がれたら一番良いんじゃないかな……と。是非やりたいですね。2人で活躍して勝つ試合があれば、最高だと思います」
藤浪から密かな目標を聞いたのはもう5年前になる。前年まで3年連続で2桁勝利をマークしていた右腕は16年はシーズン7勝。一方、北條はキャリア最多の122試合に出場し一躍、遊撃のレギュラー候補に躍り出ていた。近未来図になるはずだった甲子園のお立ち台に「19」と「26」が並ぶ光景は、結局今まで1度も実現していない。そんな中、今春キャンプ中、球団の公式インスタグラムで2人のライブ配信が行われた。ともに大阪府堺市出身の「関西人」。軽妙なやり取りで素をさらけ出す姿を見て“お立ち台の夢”を思い描いた人物は筆者だけではないはずだ。
北條は故障も癒え、6月2日に1軍合流。同日に甲子園で行われたオリックス戦で今季初スタメンを果たすと、全打点を叩き出す2打席連続の適時打で今季初のお立ち台にも上がった。北條が躍動すれば、ベンチは異様な盛り上がりを見せるし、見えない「勢い」のようなものを感じる。それは、そのまま藤浪にも当てはまる……とこのコラムの締めくくりに入ろうとしていたその時、右腕がついに再昇格を果たした。4日にセットアッパー・岩崎と入れ替わる形で出場選手登録。その夜、5点優勢の9回に早速、出番がやってきた。まだ名前がコールされないうちにリリーフカーからその体躯がグラウンドに降り立つと、聖地は一番の盛り上がりを見せた。“待ってたぞ”“おかえり”“頼んだぞ”が飛び交う。最速157キロの直球、150キロを計測したスプリットで1回零封。やっぱり規格外だ。
苦しみ、紆余曲折を経ながらも再び1軍に帰ってきた2人。“藤浪で勝った”“北條で勝った”そんなシーズンであって欲しい。爆発力を秘めた2つのピースが疾走するチームにはまった時、“あかん阪神優勝してまう”は、いよいよ現実味を帯びてくる。
チャリコ遠藤(スポーツニッポン)
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