2度の闘病生活を経て、現役時代とは違う喜びも見つけた
実は、2年前の2020年も開幕シリーズで巨人に3連敗するなど2勝8敗のスタートとなった際に、球団スタッフが横田さんからのメッセージ動画を試合前の円陣で選手たちに見せている。チームを去っても、横田さんとかつての仲間は幸せな関係で結ばれている。そして今年、再びやってきたチームの試練に横田さんは何度も「食らいついて」というフレーズを使った。
「とにかく食らいついて欲しいですね。食らいついて、食らいついて、前を向けば絶対に道は開けると思うので」
選手個々にも目を向けた。一軍に名を連ねるメンバーで横田さんと同い歳なのが5年目の熊谷敬宥。選手寮ではいつも熊谷が部屋にやって来ていたそうだ。「僕を脅かしに来てすぐ帰ったり。でもあいつは寝坊が多いので、僕が朝食前に起こしてあげてましたよ。向こうはどう思ってるか分からないですけど、同世代の中では一番仲が良いと自分では思ってます(笑)」。そんな熊谷はチーム随一の快足で代走や守備固めとして欠かせぬ戦力となっているが「スタメンでもいけると思うので。レギュラー目指して頑張って欲しいです」と期待する。
最後に横田さんに近況を伺った。2020年夏に、脳から転移した脊髄腫瘍で2度目の闘病生活を経験。「足もまだ感覚がない感じがあったりする」と後遺症はあるが、その声に悲壮感はない。
「毎日、朝は散歩して。元の体に戻せるように少しずついまはやっていますね」
今は、引退後から積極的に取り組んでいる講演活動にも大きなやりがいを感じ始めている。「講演が成功したというか、練習した通りにできた日はすごく嬉しい。参加された方からコメントが届いたりするのも有り難いですし、今はそこを求めてやっていますね。この喜びのために自分は2回も(闘病という)辛い思いをしたんだなと思って。野球選手の時とは違う喜びを感じることができていますね」。
横田さんの“生き方”は、今壁にぶつかっているすべての人に通ずるのかもしれない。
【虎番13年“チャリコ遠藤”のタイガース豆知識】
不動のセットアッパー・岩崎優は、実は生まれてから一度もコーラを口にしたことがない。小さい時に親に止められたのがきっかけで「ここまで来たらもう一生飲まない」と密かに宣言している。ただ、飴やガムで“コーラ味”は経験済み。「だいたいこんな味っていうのは分かっているので大丈夫」とコーラ抜きの人生も全く問題ない様子。
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