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マーティン、デスパイネ、そしてパスクチ…なぜロッテの外国人は愛すべき選手が多いのか

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/05/17
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イタリアンバズーカ・パスクチさんとの思い出

 そんな過去の外国人選手で、僕にとって特別な思い入れのある選手が一人だけいます。2005年と2006年に在籍したイタリア系アメリカ人のヴァル・パスクチです。もちろんすべての外国人選手をリスペクトしているけど、ここでは特別な愛を込めて“パスクチさん”と呼ばせてください。

 2005年開幕2戦目、東北楽天ゴールデンイーグルスを相手に26−0というプロ野球史上最大タイの得点差をつけた試合で、パスクチさんは4安打7打点2本塁打と大暴れ。ゲーム「リブルラブル」のBGMが原曲の陽気な応援歌も人気を集めましたが、この年は第5の外国人という立場もあって出場機会は限定的に。結局2005年は120打席で8本塁打を放ちながらも出場はわずか33試合にとどまり、プレーオフや日本シリーズでも出番がありませんでした。

 なのに、甲子園での日本一の胴上げの写真では中心になってバレンタイン監督を担ぎ上げる大男の姿が確認できるんですよね。僕はテレビの前で歓喜の涙を流しながらも、「出番が全然なかったのに、日本一になったことをこんなに喜んでる。絶対パスクチっていいやつだな」と印象に残ったのを鮮明に覚えてます。

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 翌年は出場機会が2倍以上に増えたものの、三振かホームランという大胆なバッティングや、なんでもない外野フライにスライディングを試みて逸らすなど粗いプレイが目立つようになり、残念ながら2006年限りで自由契約に。それでもなぜか8月だけは信じられないほど打ちまくって月間MVP候補にあがったり、サヨナラホームランを打ったり、インパクトの強い活躍もあったのです。

 特にサヨナラホームランの場面。軽く振ったように見えたのに、しかも振り遅れているようにも見えたのに、なぜか打球は右方向にグングン伸びてライトスタンド中段にドカーンと着弾。まさかの結末になぜか爆笑してしまいました。サヨナラホームランという感動的なシーンでなんか笑えるって選手、ほかにいます?

 マリーンズ退団後はアメリカに舞台を移し、メジャー昇格を目指して3Aで躍動していたパスクチさん。その動向はいつも気にかけていたし、僕はレプリカユニフォームに「PASCUCCI 43」と刺繍。インスタを使ってつたない英語でパスクチさんに報告したら、写真をシェアして喜んでくれて、嬉しかったなあ。

 現在は打撃コーチとしてまだ野球に携わっているみたい。ぜひパスクチさん本人のようなロマンあふれる長距離砲をたくさん育成してほしいな。

パスクチユニフォームを着る筆者 ©野島慎一郎

 少し話はそれたけど、今マリーンズに在籍している外国人選手たちもパスクチさんと同様に、マリーンズを離れたあともずっと気にかけたくなるような愛すべき選手ばかりなのです。

 プロの世界はシビアだから、今年結果が残せないままならマーティンもレアードもオフにはいなくなってしまうかもしれない。でもそれは寂しいと思える選手たちだからこそ、なんとか調子を上げて今年もまたマリーンズを引っ張ってほしいのです。

 シーズンはまだまだ始まったばかり。愛すべき助っ人たちの打棒の復活に期待しようじゃないですか!

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