あとは、チームからしたら良いことなんですけど、味方の攻撃が長いときも意外と難しいんです。気持ちを高めて最高潮でマウンドに向かいたいんですけど、相手の投手交代が挟まったりとかすると、それが落ちてくるというか。そういうときは「なんか気合いが入っていないな……」と思いながら投げていることもありました。たぶんこれはみんなそうだと思います。
中﨑選手の場合は、それを出さないように、相手に見せないようにしていく中で、表情に表れたのかなと思います。
ちなみに、自分は対象的にあまり表情には出さないタイプでした。高校時代に「淡々と投げなさい」とコーチに言われたのがきっかけで、元々はわざとやっていて、後々それが当たり前になっていきました。
なんというか、みんな打者を抑えたときは「よっしゃ!」ってなるじゃないですか。でも僕はそうではなく、「あっ、抑えた」とホッとしてしまうんですよね。気持ち的に高ぶるというよりも落ち着いていたのもあって、そういうスタイルになったんだと思います。
打たれたときなんかは、ロッカーに帰るともちろん悔しいんですけど、マウンドにいる限りは出さないようにしていました。
あの頃の中﨑選手が帰ってきた
中﨑選手は19年に右膝、20年に右腕を手術した影響もあり、ここ数年は思うようなプレーができていませんでした。リハビリも大変だったと思います。手術後に傷跡を見せてもらいましたが、正直なんて声をかけてあげたらいいかわかりませんでした。利き手を手術するというのは、すごく勇気がいることですし、いろいろ辛いこともあったと思います。それでも決断して、リハビリなど頑張っている姿を見て、凄いなと。でも、彼ならできるだろうと思っていました。迷いのなさと、野球への取り組む姿勢は彼の尊敬できるところでしたから。
そんな中﨑選手がようやく完全復活を遂げようとしています。
今シーズン、春季キャンプで中﨑選手はかつてのような力強いストレートを投げ込んでいました。その姿を見て、あの頃の中﨑選手が帰ってきたな……と嬉しくなりました。
彼は投げること以外も、フィールディングだったり、配球だったりも上手な投手。3連覇したときの経験もありますし、カープに絶対必要な戦力です。
5月に登録抹消になったときも、ちょっとしたズレだったはずです。それにキャンプで20歳前後の若手と同じようにやっていたら、もう30歳ですから、疲れ方とかも違うでしょうし、それが出てきたんだと思います。なので、疲れが抜けたらすぐに一軍に戻ると思っていました。
あとは成績を残すだけだと思います。自分のペースで自分がやりたいようにやってほしいですね。無理せず、普通にやれれば他の中継ぎ陣には負けないはずですし、抑えの栗林選手も脅かす存在になると思います。今はなかなか会えない状況なので、画面上で見て応援しています。
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