まさにロッテが目指している全員野球のようなもつ煮込み
試合開始に合わせて煮込みを買いにサンマリンへ。もう一つの名物「貝汁」はここのところお休みのようだが焼きそばやカレーライス、揚げ物といった昔ながらの球場グルメがラインナップ。
マリンには「三大もつ煮」があり、中でも昨年亡くなられた曽根会長のもつ煮込みは、このサンマリンでしか味わえないマリーンズファンなら誰もが知っている名物グルメである。
試合前のお天気番長企画などでご活躍された曽根会長はいつもサンマリンでお出迎えしてくれ、密かなパワースポットのように感じていた。
1日80kg仕込むモツは豚の小腸を使用。ニンジンや大根が入った生姜のきいたもつ煮込みは、応援に来るマリーンズファンが毎日食べられるよう飽きの来ないあっさり味。
曽根会長の味はしっかりと継承されており、今もなおマリーンズファンのみならずビジター応援席のファンの胃袋もつかんで離さない。
試合開始のタイミングに合わせてもつ煮込みをいただく。うん、これだ。やはり美味い。
濃い目の塩加減が歩いて失われた体内の塩分を補給してくれて手足の指先まで染み込んでいくのがわかる。全く臭みのない主役の小腸がトロトロに柔らかく煮込まれており、大根やニンジンの根菜類がうま味を後押しし裏方としてしっかり役目を果たしている。
ネギや七味はスッキリと全体を援護し、まさにロッテが目指している全員野球のようなもつ煮込みだ。曽根会長のメッセージが詰まった千葉ロッテ……いや、パ・リーグ全体を一丸とさせる唯一無二の球場グルメだ。
この日の先発ピッチャー石川の投球テンポと、もつ煮込みを生ビールで流し込むテンポがやけに噛み合い、1回表の終了時にもつ煮は半分になってしまった。
生ビールがなくなったところで、凍ったレモンがこれでもかというほど入ったマリーンズレモンサワーにシフトする。
甘めで酸味のきいた冷たいレモンサワーと熱々のもつ煮込みの寒暖差がたまらなく気持ちいい。
ゲームは1回から高部の鮮度抜群アジ刺しタイムリーで先制。一時は逆転を許すも頼りになるキャプテン中村奨吾の牛すじ煮込みのような熱々のタイムリーツーベースで逆転。更にはカラッと夜空に揚がった山口のハムカツ2ランホームランで勝負あり。
最後は守護神益田のピッチングを見ながらマリンくらいでしかお目にかかれないクーリッシュフローズンサワーで気持ちよく〆る。勝利の味は甘いグレープフルーツ味。
恐るべしお口の恋人。
2020年の春、新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態に陥りプロ野球も3カ月遅れで開幕した。無観客から始まり入場制限、酒類解禁と段階を経てようやく以前の活気を取り戻しつつある。だがマリーンズファンの一番の楽しみである声を出しての応援が戻ってきていない。私も最近は内野席でのんびりと見ることが多くなってきていたが、この日は久しぶりに外野席のチケットを購入し、曽根会長のもつ煮とビールを持って観戦していて思った。
いつも満席の野方にある秋元屋や月島にある岸田屋のようにマリンのライトスタンドに空席が目立つのはとても寂しい。
外野席での応援も名酒場も密になって楽しむのが醍醐味である。
チャンステーマ中もつ煮をひっくり返さないように気を付けながらジャンプして大声で応援するワクワクとスリルの中で、もう一度曽根会長のもつ煮を味わいたい。
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