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今季中の復帰は見送る方針だったが…

 そして先月24日、大関は筑後の球団施設でリハビリを開始した。藤本博史監督からも直接電話があり「焦らずじっくり治してから野球やろうな」と声をかけられた。また、藤本監督はメディア取材に対して、今季中の復帰は見送る方針を示していた。

 だけど、大関はこんなに早くマウンドに帰ってきた。

「焦ったわけじゃないです。それに最初は本当に何も分かんなかった。どれぐらい動けないのかとか、想像もついていなかった。ただ、体を動かし始めると思ったよりも動けた。そして体が戻るのも結構早かったし、ブルペンでも強く投げられるようになったので、どんどん実戦に向けたプログラムとかも組んでもらったのかなと思います」

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 久しぶりに臨んだ試合、打者に向かって投げること、マウンドの感触。やはりどこか、今までに感じたことのない気持ちが沸き上がっていた。

「離脱するような怪我もしたことがなかったので、なんか初めての感覚でした。しっかり投げなきゃいけないという気持ちと、投げられる喜びと、いろんな感情が混ざったマウンドでした。試合前もどんな気持ちでマウンドに上がるのが良いのかと色々考えたけど、やっぱり実際に試合にならないと分からなかったし、改めて試合に入るときはこんな気持ちで投げたほうがいいんだというのを思い出しました。自分の中では前に進めているっていう感じです」

 診断結果が出て手術を受け、その詳細が判明するまでどれだけの不安に襲われたのか。どんなに想像をしてみても当事者にしか分からない。だからこそ大関のこんな言葉にすごく重みを感じた。

「目標がある人生や生活ってすごく大事なことというか、大事にしたいと感じました」

 そして、たくさんの応援、多くの人に期待をしてもらっていることへの感謝も再確認した。現在は幸い日常的に薬を飲む必要もなく、今後も通院はあるが経過観察だけで済んでいる。

 一度マウンドに上がり、復帰戦としては上々のパフォーマンスを発揮することが出来た。となれば、見据えるのは今季中の一軍復帰だ。

「焦るのは良くないと思うんですけど、やっぱり早く戦力になりたいという思いはあります。その両方の気持ちをうまくコントロールしながらやっていきたい。ただ、戦力になれる状態に戻らないと呼んでもらっても意味がない。まずはしっかり自分のピッチングができるように戻していきたいです」

復帰マウンドを終えると、安心したような笑顔を浮かべて取材の場に現れた ©田尻耕太郎

「今の筋量とかはむしろちょっとアップしているんです」

 ところで、この復帰登板の1イニング13球だけしか見ていないが、大関の投球フォームは7月までと明らかに違っていた。

 じつは病気判明の直前に別媒体で彼にインタビューを行う機会があり、その時にこんな話をしていた。

「そこ(不調の原因)は昨日(7月31日)に解決したんで。たぶん、次は大丈夫です。最近良くなかったのは、自分の中で変えていた部分があったから。そこからおかしくなったことに気づいたんです。昨日、前の感覚を取り戻せたので大丈夫かなと思います(※7月は月間1勝3敗、防御率8.10だった)」

 それを踏まえて、復帰登板後にはこのように話してくれた。

「手術前に気付いた点を修正するのと、新たに気づいたところの二つを考えて投げています。戻した部分と改良した部分が出せた。そんなに悪い方向に行かないんじゃないか、これから上がっていくんじゃないかと思います」

 大関が強くこだわるのは体の使い方。自分に合った形で、いかに効率よく力を発揮できるかを追究し続けている。

「(フォームの中の)リズム感とかですかね。大まかに言うとリズムですけど、言葉にするのは難しい」

 また、この日の大関を見て思ったのは手術や入院を経ていても体型がほとんど変わっていなかったこと。もっと痩せてしまったのではないかと心配していた。

「若干落ちたんですけど、少しまた戻して、今の筋量とかはむしろちょっとアップしているんです。そこがこれから(の投球)に繋がっていくかなと思っています」

 10月上旬まで続くレギュラーシーズン。そして、優勝ないしはAクラス入りすれば進出するポストシーズンへ。たしかな目標がすぐ目の前にあることに、大関友久は幸せと感謝を感じている。

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