球団史上2度目のセ・リーグ連覇に向けてまい進中のヤクルトの“助っ人”外国人、パトリック・キブレハンをご存じだろうか? 年齢は32歳、登録は外野手。昨年のリーグ優勝、日本一に貢献したホセ・オスナ、ドミンゴ・サンタナという2人の野手とは違い、今年の5月に来日したばかりの「遅れてきた男」であり、熱心なヤクルトファン以外にはまだなじみが薄いかもしれない。

 成績的にもオスナ、サンタナに比べると見劣りしてしまうが、彼にはどことなく応援してあげたくなるような雰囲気がある。そこでエールの意味を込めて、キブレハンの「スゴいところ」を紹介したい。

キブレハン

スゴいところ(1)「とりあえず首が太い」

 のっけから「そこ!?」と思われそうだが、キブレハンは首が太い。それには理由がある。彼の入団が決まり、獲得に携わった奥村政之編成部国際グループ担当部長に、過去の外国人選手でいえば誰に似たタイプなのかを尋ねてみると──。

ADVERTISEMENT

「背番号(2番)もダブりますけど、2人ともフットボールやっててね…(キブレハンの写真を示しながら)首が太いでしょう? 体型的にもね、パワー的にもスタイル的にも、リグスとちょっと(似てますね)」

 なるほど、古田敦也兼任監督時代の2006年に「バントをしない2番打者」として、39本塁打、94打点をマークしたあのアダム・リグスに似たタイプか。だが、それよりも気になったのは「首が太い」という言葉だった。「フットボールやっててね」というとおり、写真を見ても野球選手というよりはアメフトのプレーヤーっぽい。

 調べてみると、彼はガチでアメフトをプレーしていたことがわかった。高校時代は野球とアメフトの二刀流。ところが全米でも8番目に古い歴史を持つラトガーズ大学では、奨学金を受けてアメフトに専念し、守備のポジションであるディフェンスバックとして4年間で通算40タックルを記録した。

スゴいところ(2)「3カ月試合に出ただけでドラフト4巡目」

 アメフト選手として最後に出場したのは、大学4年の12月に野球の“聖地”ともいうべきヤンキースタジアムで行われたピンストライプボウル。アメフトを“引退”すると、年明けから野球に挑戦する。高校卒業と同時に野球から離れて4年近く。彼はここでも「遅れてきた男」だった。

 アメリカの大学野球のシーズンは2月に始まり、学年末を迎える6月に開催されるカレッジ・ワールドシリーズで終わる。大学生活最初で最後の野球シーズン、正三塁手の故障によりチャンスをつかんだキブレハンは、なんと打率.402、10本塁打、36打点でビッグイーストカンファレンス史上でも初の三冠王を獲得。最優秀選手にも選ばれ、6月のドラフトではシアトル・マリナーズから4巡目指名を受けた。

 つまり大学4年になって3カ月ちょっと試合に出ただけで、メジャー球団からドラフト指名されたことになる。ちなみにこの時、マリナーズから1巡目指名を受けたのはのちにチームの正捕手となるマイク・ズニーノ(現レイズ)で、3巡目は2018年にア・リーグのセーブ王に輝くエドウィン・ディアス(現メッツ)。キブレハンに次いで5巡目で指名されたのは、ドジャース移籍後にレギュラーに定着して、2021年にはオールスターにも出場するクリス・テイラーである。