それから、娘。社会人になって数年がたち、いよいよ家から巣立っていきました。娘からは「さびしいでしょう? 絶対にさびしいよね!」などと言われ、確かにそうではあるのですが、考えてみれば、これからは誰にも気兼ねしなくてよく、食事だって自分の好きなものを作って食べていい。
“晴れて”のおひとりさま生活スタートです。
子育て中は「足りない」と言われるのが怖くて、とにかくボリューム最優先、さらに「ごはんまだ?」と言われないよう、スピード勝負の日々でもありました。一人分ならば少量、ちょっとぜいたくな食材だって選べますし、自分のためだけなのですから、料理に時間をかけても、かけなくてもいいのです。
そのことに気づき、がぜん楽しくなってきました。
ひとりで過ごす時間の知恵
今はおひとりさまの調理器具にハマっています。
これまで使っていた鍋で一人分を作ろうと思うと、鍋の底面積に対して食材のかさが少なく、なんだか勝手が悪いのです。
需要があるのでしょう、探せばおひとりさま用の調理器具はすこぶる充実していて、ひとつひとつ集めるようになっていました。フライパンも両手鍋もセイロもずいぶんと小さくて、見た目が単純にかわいらしく、なんだかおままごとをしているみたいでワクワクしてくるのです。
自分のために、一人分を、ちょうどよく。
自分の機嫌は、自分でとる。
これが誰しも、ひとりで過ごす時間の知恵になるのではないでしょうか。
薬膳とは、自分の状態と向き合いながら、食材を選ぶところから始まります。けれどそれは食材の力だけでなく、力を求める心と体があってこそ。食事と心と体、この3つと上手につき合い、不調や不安に戸惑いながらも乗りこなし、ともに健やかな老後へと向かいましょう!