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阪神6割、オリックス4割のはずが……

 そんな応援実況にもようやく馴れてきた2005年、パ・リーグとセ・リーグの交流戦がスタート。実況を担当している2球団がシーズン中に激突することになりました。オープン戦のオリックス・阪神戦でも相当気を遣って実況していたこのカード、どうする!? 応援実況。

 特に苦心したのは、甲子園球場での阪神・オリックス戦。なぜならば、その頃には「サンテレビボックス席」でオリックス主催試合も年間に数試合(05年→8試合、06年→10試合、07年→11試合など)放送されていたからです。応援してきたチーム同士の対戦、『五分五分でいいのかなあ』と思案していたところ、担当プロデューサーから『甲子園球場の雰囲気を考えたらシブロクでいいんじゃないですか』。虎ファンの大声援が渦巻く甲子園が舞台です。阪神6割、オリックス4割というのが妥当なところでしょうか。

2005年5月25日、甲子園で行われた交流戦、阪神対オリックス。オリックス先発の川越英隆 ©時事通信社

 さあ、プレーボール! 解説は阪神の元打撃コーチの広澤克実さんと、オリックス元投手コーチの野田浩司さん。序盤は阪神6割、オリックス4割で進行できていた(そう思っていただけかも)実況ですが、応援の数では圧倒的に不利なオリックスの頑張りで勝ちパターンへ。こうなると私も調子に乗り始めて一気にオリックス応援実況の世界に入り込んでいきました。野田さんも『交流戦がスタートした時にはオリックスは阪神に完全に力負けしていましたが、この数年でチームに地力がつきましたね。もう互角ですよ』と教え子たちの奮闘に目を細めます。その横にはちょっぴり寂しそうな広澤さん。『タイガース、試合も分が悪いけど、放送席も今日は解説・実況がオリックスの2対1だからいつもと勝手が違って困っちゃうよ』。青写真とは異なる色合いとなった放送でしたが、試合展開によっては大きく方向が変わっていくナマの野球中継の面白さ。交流戦が始まって数年後の懐かしいひとコマです。                 

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 そして、交流戦の期間中にいつも考えることは2004年のあの球界再編騒動。愛する球団が消えるとは、球界が縮小に向かう流れがあったとは、それまで想像したこともありませんでした。大好きなプロ野球をより多くのファンの皆様とともに楽しみたい。プロ野球の魅力をさまざまな切り口から探っていきたい。実況の世界は奥深すぎてまだまだ分からないことが一杯ですが、新しい何かを求めて少しずつ歩き続けたいと思っている今日この頃です。

 交流戦の阪神・オリックス戦今年の第1戦、オリックスの勝利で、今、試合終了。山本由伸投手の素晴らしいピッチング、ヒヤヒヤさせられたけど踏ん張って最後を締めた山﨑颯一郎投手、センター・中川圭太選手のスーパープレー、大城滉二選手の渋い二塁封殺。9回裏だけでも見どころ満載。野球っていいですね。

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