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勝利が当たり前になれば、数少ない負けも大きな存在になる

 こうした記憶から明らかなのは、人は自らや自らが応援するチームが強い時には敗北の方に意識が向き、逆に弱いチームのファンは負け慣れているので、数少ない勝利でも長く喜びが続く、という事だろう。

 そして大事なのは、それはきっとそのチームの強弱にも関係がある、という事だ。

 負け慣れている人は、数少ない勝ちに満足し、自らが負けた試合には大きな関心を向けようとしない。だから、そこから努力して抜け出そうとはしないし、応援する人もあまり多くを求めない。自らも周囲も上を目指す事を求めないなら、当然、上に行ける筈がない。

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 しかし、勝利が当たり前になっている人には、数少ない負けも大きな存在であり、だからこそその敗北を心底悔しがり、同じ失敗をしないように努める事となる。だからこそ、勝利が当たり前の人達は、そこから努力して、更なる上を目指す事になる。勝利を積み重ねて成功すれば、そこには大きな果実が待っており、大きな果実は人を更に上へと誘う事になる。きっと中嶋監督が監督代行時代から、「育成」だけでなく、「勝利」をもキャッチフレーズに含めたのもそれが理由だったに違いない。何故なら世の中には勝利した人間しか味わえない喜び、というものがあるからだ。

ファンはもっと欲張るのが当たり前なのだろう

 考えてみれば、それは筆者の本業である筈の研究の世界でも同様だ。成功する人は更なる成功を求めて努力するけど、失敗に慣れてしまった人、低い目標しか立てられなくなった人の多くは、そこから抜け出す事を諦めて努力しない。一旦、低い目標に安住してしまえば、人はそこから進歩しないのだ。厳しいようだけど、それが現実という奴だ。俺ももうちょっと頑張ろう。

 ともあれ、だとすればオリックスファンも、「あんなに弱かったチームが強くなった」などと満足せずに、一つ一つの敗北をもっと悔しがるべきなのだろう。そういう意味では、前半戦最後の連敗を地団駄踏んで悔しがるソフトバンクファンは、やはり尊敬すべき「正しい強いチームのファン」なのだ。せっかく選手もベンチも頑張って、オリックスが強いチームになったのに、ファンだけが何時までも「弱いチームのファン」のままじゃきっとダメだ。だって、我々は実際に、「とても強いチームのファン」なんだから。

 だからこそ、ファンはもっと欲張るべきだし、欲張るのが当たり前なのだろう。お金を払って見に行く以上、見に行った試合は全部勝って欲しい、そう思うくらいできっとちょうど良いに違いない。そうしてこそ、この「オリックス常勝時代」はずっと続くのだと思う。

 という事で、日本ハムさんには悪いけど、この2連戦もきっちり勝たせて貰いますよ。だってうちのチームは強いんですからね。常勝チームには負けは許されないんですからね。

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