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「部屋を暗くして、クラブミュージックを流してました」

 一方の太田は広島の名門出身。1歳上の兄・創さんの後を追って広陵に入学した。寮生活は2年から3年まで今も楽天でチームメートである吉川雄大と同部屋だった。携帯もテレビも禁止の生活。ささやかな楽しみが「音楽」だった。

 2人の部屋は「他の選手の部屋よりもちょっと広めだった」といい、選手数人が集まっては「部屋を暗くして、クラブミュージックを流してましたね。みんなでライトとかもつけて、クラブみたいにしてました。行ったこともないのに(笑)。携帯も駄目、テレビも駄目で音楽を聴くことしかできなかった。結構長い時間やってましたね。懐かしいな……」。DJのモノマネをしたり、気分がアゲアゲになるような曲を流しては日頃の練習の疲れを癒やし、気分転換していたのだろう。太田には申し訳ないが、聞いていて少し悲しくなってしまった(※冗談です)。

 グラウンドに出ればきつい練習が待っていた。中でも過酷だったのが「45秒」と呼ばれるタイム走だ。ホームベース、左翼ポール前、右翼ポール前にコーンを置き、この三角形を45秒以内に一周する。「最低3回。回数は中井(哲之)監督の気分次第でした」と苦笑いを浮かべていたので、「またあの時期に戻りたいか?」と少し意地悪な質問を投げると、「絶対に戻りたくないです!(笑)」と二塁送球よりも早く、間髪入れずに返ってきた。

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 広陵野球部で築いたもので今でも生きているのが「規則正しい生活」だという。「起床はそんなに早くなくて6時。寝るのは完全消灯で22時。通いの高校とか朝練とかある高校だともっと早いと思うんですけど、僕らは練習も遅くまではなくて、朝練もないので睡眠はしっかり取らせてもらいました。そういう習慣は今もあって、ちゃんと僕も寝るようにしています。夜更かしせずにちゃんとパッと寝るようにしています」。簡単に出来るようで意外と難しい「自己管理」ができているのは間違いなく、広陵で培った才能だと感じた。

 2人は激戦に挑む後輩たちに激励のメッセージを送った。高校時代に聖地の土は踏めなかった辰己は、阪神戦で甲子園でプレーした経験から「僕は甲子園に行ったことがある。甲子園の土を踏んだことがある先輩として、『浜風エグイで』というのは伝えたいですね。とにかく楽しんでほしい」とドヤ顔でエールを送った。

 一方の太田は「夏に優勝したことがないので、悲願の優勝を果たしてもらいたいなというのと、あとは暑いので倒れないように、けがをしないように頑張ってほしいですね」と優しい口調で言葉を紡いだ。

 ペナントレースも残り48試合。母校の奮闘を刺激に辰己と太田にはさらに活躍してもらいたい。

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