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日米通算200勝へ

 今年の楽天イーグルスの取材の幹事社はtbc東北放送。仙台のテレビ局が持ち回りで担当するもので、テレビの代表インタビューや広報さんとの調整役を担う。私にとって、幹事社として今年最初の仕事が、田中将大投手の契約更改後の代表インタビューだった。年末年始をニューヨークで過ごしたこともあり、チームで唯一、年を越しての契約更改となった。この時点で推定年俸は明らかになっていなかったが、相当な大幅ダウンが予想されていた。私も、伸ばした背筋に緊張が走る。

――昨シーズンを振り返っていかがですか?

「日本に戻って来てから4勝、9勝と、球団から期待されていたところには大きく届いていないと思いますし、ファンの方々の期待を裏切ってしまっている2年間だったので。ふがいないシーズンだったなと思ってます」

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 この他にもさまざまな質問を投げかけたが、反省の言葉ばかりが口を衝く。しかし、この話題に触れた瞬間、明らかに口調が変わった。

――日米通算200勝まであと10勝です。記録についてはいかがですか?

「日本一という目標は変わりませんが、個人的な部分で、200勝というところを大きく超えていかないと。そこはシーズン途中、早い段階でクリア出来るのが一番いいかなと思います」

 今シーズン中の200勝達成、つまりシーズン2桁勝利は最低限。そこを大きく超えていかないといけない。引き締まった表情から強い覚悟を感じた。

「感覚はガラッと変えたい。またこの2年間と同じようにやっていたら同じようにしかならないので、大きく変えようと思っています」

 かつてのように、真っ直ぐでゴリゴリ押して、三振をバンバン取って相手をねじ伏せるという投球スタイルではなくなった。投球フォームもマイナーチェンジを繰り返しながら、今できる最善を尽くす。高校時代や日米での経験から裏付けされた感覚で、熟練の投球術を見せてくれている。 4月6日にNPB通算1500奪三振、4月21日に史上4人目の日米通算2500奪三振を達成した。次なる大記録は、200勝。

 8月3日のオリックス戦では、今シーズン最長の8回を投げ1失点。この試合が、通算196勝目。いよいよカウントダウンに入った。

 夏の終わりの宮城県。

 高3の夏。これまで高校野球関連の雑誌の表紙に大きく載っていたのが、甲子園後はサブ扱いになってしまったと、以前自身のYouTubeチャンネルで笑いながら話していた。

 あれから17年。某有名野球雑誌の今月号の表紙には、駒大苫小牧の田中将大が大きく取り上げられている。やっぱり田中将大は、我々甲子園ファンのスターだ。

 スターの大記録と、仙台育英の連覇。夏の終わりの宮城県が、2つの快挙に大いに湧く。そんな未来が待ち遠しい。

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