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「あいつは毎日を完全燃焼してやってきている」

 今年ホークスに入団した古川侑利投手にも、何度も勇気を貰った。こちらも以前、コラムに書かせて貰ったが、登板機会に恵まれない時のモチベーションの保ち方、受け止め方が素敵だと思った。

「『今日も投げられなかった』って落ちるより、 なんか自分にプラスに出来ることがあるかもしれないっていうふうに考えて、ウエートを多くやってみたり。自分のためになるように過ごそうと思っていましたね。チームの力になるにはどうしたらいいのかっていうふうにマインドを変えていって、自分のやるべきことを毎日やろうって」。古川投手のこの言葉は、私の野球ノートにも書き留め、太く赤線を引いて何度も見返すようにしている。“落ち込む”、“悔しい”のその先を冷静に考えられるようになった。

 古川投手は、その後2軍で結果を残し、8月末に1軍に再昇格したが、わずか1試合の登板で登録抹消された。応援する側としても「なんでだよ」と悶々としたが、本人だってショックだし意表をつかれただろう。監督室に呼ばれ、「編成上の理由で申し訳ない」と言われたそうだ。理由も理由だし、モヤモヤしたはずだが、古川投手は監督室を出た時点で切り替えたという。凹んでいる時間があったら、自分をより良くするために時間を使おうというのが古川マインド。口で言うのは簡単だが、実行に移すのは簡単では無い。それくらい人生掛けてやっている訳だから、ショックの大きさも想像を絶する。でも、古川投手はあの後もいつも通り最後まで1人黙々と練習していた。

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 そんな古川投手のことを田之上慶三郎2軍投手コーチが「あいつは毎日を完全燃焼してやってきている。そういう選手って、結果は必ず何かしら付いてくると思っています。やっぱり何くそ、何くそという思いで常に向上心持ってやっているので、ここ一番っていう時に力を出せるタイプだと。そういうやつが土壇場で結果を出すと思う」と激励した。その言葉も胸に刻んだ。そして、自分自身にも問いかけてみた。「今日を完全燃焼出来ましたか?」と。練習場や職場に行けばスイッチを入れていたつもりだが、心のどこかにクヨクヨ星人が居座っていることもあったと思う。古川投手はやっぱりすごい。「尊敬する人は?」と聞かれたら、全力で「古川侑利さんです」と答えたい。

尊敬する古川投手のユニフォーム、買っちゃいました ©上杉あずさ

 また、怪我などが続き、試合出場が減っていた九鬼隆平捕手。現在は3軍や4軍で徐々に試合復帰しているのだが、彼の姿というのは本当にいつだって素晴らしい。ベンチから一番声を出してチームを盛り上げる。時には、愛のあるイジりで選手を鼓舞し、選手のみならず、スタンドの観客にも笑顔を届けてくれる。もう7年も前に遡るが、甲子園で見た秀岳館高校の主将・九鬼隆平を今でも感じる。キャプテンシー溢れる姿は、自身の苦しい状況なんか一切感じさせない。心からカッコイイと思うし、私もベンチにいることがほとんどだから、そういう姿を見習わなきゃなと思う。

登板時以外はいつもコーチャーに行ったりスコアを書きながら声を出します ©上杉あずさ

 そして、チーム最年長の和田毅投手。皆さんご存知の通り、年々進化が止まらない。昨年、41歳にして自己最速149キロをマークした。今季も6勝を挙げている。和田投手と言えば、体幹や走り込みなど地味でキツいトレーニングを黙々とこなす。弟子入りした後輩達がヒーヒー言う中、和田投手は誰よりも強い。私のチームにも一回り以上年下の若くて上手な選手がいる。野球経験は及ばないけど、体幹とか走り込みだったら、今からでも若手に負けないものを作れるはずだと和田さんの姿を見て奮い立った。次元が違うのは重々承知だが、年を重ねるごとにむしろ進化できるんだと和田投手が証明してくれている。もちろん、それには並大抵でない積み重ねてきた努力があるはずだ。諦めるのに年齢は理由にならない。むしろ年々進化できるんだと教えてくれた和田投手を思うと、冬の練習にも力が入りそうだ。

 思い返せばキリがないくらい、励みになった選手たちの言動はたくさんある。本当に私はホークスに励まされ、生かされているんだと思う。

 勝っても負けてもいろいろあっても、私はホークスが好きなのだ。そして、勝手ながら、いつもパワーをくれる選手たちに感謝している。

 私事が多くなってしまったが、今シーズン最後の文春野球コラム、気持ちを込めて綴らせて頂いた。お読みくださりありがとうございました。

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