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石原 今でこそ代理母出産に関わる仕事をしていますが、当時は妊娠に関する知識がまったくなくて、30代後半という年齢的な危機感もなく、「いつかできればいいかな」とのんびり構えていたとろがありました。

 ただ、夫のほうは強く子どもを希望していたので、「夫に子どもを抱かせてあげたい」という気持ちはとても大きかったです。

石原さんご夫婦と幼き日の娘さん

代理母出産を選んだ理由

――代理母出産という選択肢はどのような経緯で出てきたのでしょう?

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石原 2度の流産を経験して身体の状態が落ち着いたころ、婦人科医に今後のことを相談しようとしたところ、不妊治療医をたずねるように言われました。最初の数人の不妊治療医は妊娠初期で子宮破裂したケースをあまり聞いたことがないということでしたが、何人目かで行きついた産科医で不妊治療医でもある医師が、過去に私のようなケースを見たことがあるとのことでした。

 その医師が言うには、私の場合、妊娠の過程で再び子宮破裂を起こすリスクがあるということでした。自分で産むとなると再び同じことが起きる可能性があって、そうなると私の命も危ないし、子どもも何らかの障害をもって生まれる、または死亡するかもしれない。そのリスクが何パーセントあるかまでは言えないが、自分が死んでしまう危険を冒してまで、子どもを授かりたいのかどうか、その点を考えなければならない。そう言われました。

 私も妊娠中、ずっとお腹に爆弾を抱えているような状況で過ごすのは精神的にもたないと思いましたし、夫からは自分で産むことはしないでほしいと強く言われました。代わりに不妊治療医から提示されたのが、養子縁組と代理出産の2つの選択肢でした。ご存じのように、カリフォルニア州では代理母出産が法的に認められています。結論は一旦家に帰って考えようと持ち帰りましたが、自分で産むという選択肢はこの時点でもうありませんでした。

――最初に代理母出産と聞いてどう思われましたか。

石原 代理母出産自体については、夫の友達にロサンゼルス在住で、日本人の夫とアメリカ人の妻のご夫婦がいて、その奥さんがかつて代理母になったことがあると前から聞かされていました。なので「ああ、あの事ね」と、なんとなくイメージすることはできました。

 ただ、自分事として考えたとき、当時、私は妊娠に子宮や卵巣が必要ということすらよくわかっていないほど無知でした。ましてや医学用語をたくさん用いた英語での説明だったので、実際にどんなことをするのか、完全には理解できてはいませんした。

 自分でよくよく調べてみて、まずは注射で私の卵胞を育てて採卵し、採れた卵子と夫の精子で受精卵をつくり、それを代理母の子宮に移植するという一連の流れを知って、こんなことが本当にできるのかと、信じられない気持ちでした。