カップ焼きそばといえば、よく名前が上がる人気商品は「ペヤング」「U.F.O.」「一平ちゃん」だ。しかし、近年急速に売り上げを伸ばしている隠れた大ヒット商品がある。それは「マルちゃん ごつ盛り ソース焼そば」だ。

 販路の都合上、コンビニで売られることのない「ごつ盛り」は知名度が低い。なぜ、3社の人気商品を凌ぐほど売れているのだろうか? その躍進には意外な経緯があった。

 ここでは、本業のITエンジニアのかたわら、ブログ「焼きそば名店探訪録」を運営し、これまで全国1500軒以上の焼きそばを食べ歩いてきた塩崎省吾さんによる『カップ焼きそばの謎』(ハヤカワ新書)より一部を抜粋。

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 同名の大型カップラーメンの後に発売された「ごつ盛り ソース焼そば」ヒットの裏側に迫る。(全3回の3回目/最初から読む

©Wakko/イメージマート

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2010年〈マルちゃん ごつ盛り ソース焼そば〉発売

 大型カップラーメン3種が発売された翌年の2010(平成22)年3月1日、〈マルちゃん ごつ盛り ソース焼そば〉が発売された。

 先行した3品と同じくニュースリリースはないのだが、WEBアーカイブで当時の商品ページを発掘できた。商品説明はごくあっさりした内容だ。

 麺130g、スパイス感のあるブレンドソースに「キューピーからしマヨネーズ」が付いた大盛ソース焼そば。

 麺量130gは、エースコックの〈大盛りいか焼そば〉とほぼ同じ、通常商品の約1.5倍のボリュームだ。カップ焼きそば1個でも十分な満腹感が得られる。

 付属の〈キューピーからしマヨネーズ〉も大きな特徴だ。マヨネーズ付きカップ焼きそばというと〈明星 一平ちゃん夜店の焼そば〉のイメージが強いが、実際には〈バゴォーン〉シリーズの方が先行していた。東洋水産にとっては捲土重来という位置づけだ。

 かやくはシンプルにキャベツのみ。青のりや紅生姜などのふりかけも付いていない。サンヨー食品・元副社長の井田信夫が語った《ヤキソバはキャベツ》という言葉を思い出す。

 そういえばサンヨー元社長の井田毅も、エースコック元社長の村岡寛に《消費者はカップ麺に具材は期待していない》とかつて語っていたらしい(『産経新聞』2020年9月30日、12頁)。キャベツだけというのは、あれこれ付けるよりも商品の完成度をかえって高めているのかもしれない。