『六本木クラス』は韓国の人気連ドラ『梨泰院クラス』の日本版リメイク。『梨泰院~』をネトフリで全話見ていたから『六本木~』のほうはどんなもんだろうと見てみた。そしていろいろ衝撃を受けた。
あまりにもよく似てて。リメイクなんだから似て当然だが、これは「そっくりさん」の域では……。郷ひろみのあとに若人あきらが出てきたような……たとえが古すぎるが。制作者のモチベーションは、「韓国版と見た目を似せる」ことなのか。それぐらい、表面的なところが似てる。主人公の新(あらた)、主人公の父親、主人公の初恋の相手優香、そして父を轢き殺した同級生の龍河、みんな顔も髪型も似せてきて(女子高生優香の髪型、ありゃカツラだろう。似せたいあまりなのか不自然だ)、「梨泰院クラスそっくりさんコンテスト」の様相を……。別にそこはムリに似せなくても。まったく同じになんかなり得ないんだから、こういう似せ方はかえって違和感感じちゃうよ。登場人物の性格や思いや行動がドラマをつくる、というところに立ち返ってくれ。
ただ、バカで暴力的で小心で卑怯者の龍河を演じる早乙女太一が、物凄く上手いのでそこは素直に舌を巻く。ただそれが「DV騒ぎ起こしてたよな太一……こうやって奥さん殴るのか」などと思ってしまってドラマに入っていけなくなったので上手いのも考え物だ。
そんな表面的そっくりさんドラマの中で「こいつはちがう!」となったのが長屋茂。主人公の「倒すべき巨大な敵」である、日本最大の外食産業チェーン会長。暴力バカ息子・龍河の父。
演じますのは香川照之。
いや、見た目は『梨泰院~』に寄せている。韓国版のほうでも、この会長のおっさんは、いかにもワルそうなラスボス的風貌で、常に印象的な着物というか韓服を着てそれがえらいカッコ良い。『六本木~』の香川照之も着物着用。和服だけど韓服っぽく見える。
でも違うんだ、人物が。『梨泰院~』のほうのラスボスは、何を考えているのかわからない、感情が鈍磨した岩みたいな不気味なおっさんだったが、これが六本木にやってきたらいきなり『半沢直樹』の世界かと見紛うマンガみたいな顔芸のおっさんに……。この軽さはいったい。あまりにも人物が違いすぎる。コントかよと思う。ここが、日本版の「独自性」だとすると、主な出演者たちが「そっくりさん」なのも、笑わせにかかってるのかもしれない。……ダメだろう。
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source : 週刊文春 2022年8月4日号