(みぞぐちあつし ジャーナリスト。1942年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。出版社勤務を経てフリーに。著書は『暴力団』、『血と抗争 山口組三代目』、『山口組四代目 荒らぶる獅子』、『食肉の帝王 巨富をつかんだ男 浅田満』、『喰うか喰われるか 私の山口組体験』など多数。)
つらつら考えてみますと、僕は本の置き場を求めて引っ越してきたのではないかと思い至りました。本が好きで捨てられない質だし、自分の本を1冊書けば、参考資料が大きな本棚の3分の2を占めてしまうという事情もあります。
本の置き場探しが、僕が住んできた家の履歴と言っていいかもしれません。
第一人者として知られる暴力団取材は、50年に及ぶ。ほかにも新興宗教や同和利権など日本社会の暗部や裏社会をテーマに著作を発表し続けるのが、ジャーナリストの溝口敦さんだ。
1942(昭和17)年7月、東京の浅草に生まれた。家族は両親、兄と姉の5人。
東京大空襲で家が焼け、母親は僕を背中におぶって逃げ惑ったそうです。そのあと母親の縁を頼って川崎市野川の農家に避難し、3歳で終戦を迎えました。
それから、現在の川崎市高津区内で何度か引っ越します。坂戸の農園の従業員寮は、ほとんど記憶になし。両親がこの農園で働いていたのかさえ、覚えていません。ただ一番古い思い出はこの時期で、地べたに屈み込んで、白墨みたいなもので戦車や戦闘機の絵を描いていた記憶です。
続いて、同じく坂戸の一戸建て。二間しかない小さな家です。次が、東急高津駅そばの商店街。ここは1階と2階に2部屋ずつありました。
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source : 週刊文春 2022年9月1日号