「常に新しいものを」。時代を挑発し続けたジュリー・チームは岐路に立たされていた。エキゾティクスの終焉、そして沢田研二はどこへ向かうのか。第7章終幕。

 

 それまでプラスに働いていた力学が、反動でマイナスに転じる時がある。誰の人生にもあることで、エルヴィス・プレスリーにも、ローリング・ストーンズにも、マイケル・ジャクソンにもその時はあり、我等がスーパースター、沢田研二のそれは1983年であった。後に、沢田は〈ランキングの椅子取りゲームから漏れ出した〉(「朝日新聞」2011年9月20日夕刊)と、表現した。

 5月発売の39枚目のシングル「晴れのちBLUE BOY」が先端のリズムを鳴らして不発に終わった後、9月に40枚目のシングルとして「きめてやる今夜」がリリースされる。77年に沢田が内田裕也に贈った楽曲の詞を補作し、元ブルー・コメッツのメンバーだった井上大輔が作曲して、メロディを変えたセルフカバーである。編曲は、エキゾティクスのリーダー、吉田建。

 沢田の音楽担当、木﨑賢治は思案を重ねて、スターが自然に歌える歌いやすい曲を作った。

「僕はいつも、うまくいってもいかなくても、じゃあ次はこうしようというアイデアがありました。ジュリーがやればカッコよくなる、ジュリーになら作れると思ってやってきて、この時はちょっと新しいものをやらない方がいいかという気になっていたんですね。その時期のジュリーの歌い方を想像しながら、少し隙間が空くようなメロディがいいんじゃないかと思いました」

 この頃になると、沢田は短髪で歌うことが多かった。自分で原作を選んだという森田芳光監督の映画「ときめきに死す」(84年公開)、大竹しのぶと共演した早坂暁脚本のドラマ「恋人よ、われに帰れ」と映像で主演作が続き、主要な役での出演となる、翌年1月からスタートするNHK大河ドラマ「山河燃ゆ」の収録が始まっていた。役作りもあったのだろう。

 短髪にメイクもよく似合ったが、2年ほど前に、ファンクラブ誌「ヤング」でお洒落のポイントを聞かれて、〈太らないこと〉と答えたスターの頬が少しふっくらしていた。83年6月号では、宝物は? と問われると、〈やせようと思ってもやせられない健康なこの身体です(笑い)〉と答えている。「歌は仕事だ」と口にするようにもなっていた。

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source : 週刊文春 2022年9月1日号