【前回までのあらすじ】名誉毀損で刑事告訴された瀬尾政夫のために、久代奏は先輩弁護士二人と戦略会議を開いていた。名誉毀損罪の違法性を斥けるためには、「公共性」「公益目的」「真実性」の三要素を満たす必要がある。だが、瀬尾はブログで「これが俺の恨みだ。怨念の深さに震えろ」と「私怨」を匂わす発言をしており、「公益目的」と認められない可能性があった。

 

「『私怨』について瀬尾さんは何て言うてはんの?」

「それが……個人的に許せなかった、というニュアンスですね」

「いや、それは危ないな。違法性阻却事由はスロットやから、三つ揃わんと意味ないで」

「私も『公益目的』について説明したんですけど『世のため人のためなんておこがましい』みたいなことを言うてはりました」

「迷惑なやっちゃなぁ。でも、もう一つ【或るカナリアのさえずり】って投稿文あったやん。あっちの方はモロに社会問題としての訴えやったで」

 青山に指摘されて、奏は膝を打った。確かに「確証バイアス」や「エコーチェンバー」といった言葉を使って、思考が偏っていく様を解き明かし、承認欲求や匿名性についても解説している。瀬尾は投稿文の筆者であることを認めているので「公益目的」の緒(いとぐち)になるかもしれない。

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source : 週刊文春 2023年9月28日号