2か月ほど前か。金曜日の夜8時。所在なくテレビをザッピングしてると、のんびりした山村の風景が映った。

 山間(やまあい)の道を、決して若くはない警察官が息を切らして自転車を漕いでいる。たまに擦れ違う住民からは「駐在さーん」と声がかかる。

 駐在さん役は、民放連ドラ初主演の寺島進だ。テレビ東京『駐在刑事』の第一回だった。なんとなく画面を見ているうちに、駐在さんこと江波敦史(寺島進)の過去と現在もわかってくる。

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「駐在刑事」制作発表

 警視庁捜査一課の敏腕刑事だったが、奥多摩警察署の水根駐在所に左遷された。殺人事件の重要参考人である女性の取り調べ中に、一瞬の隙をつかれ服毒死されたのだ。自殺と警察は断定した。奥多摩に来て五年。正義感が強く、住民のために汗をかく江波は、いまでは駐在さんとして地元に馴染(なじ)んでいる。

 東京を西へ西へと、ひたすら進み、JR青梅(おうめ)線の終着駅に辿りつくと、そこが奥多摩だ。多摩川の上流が織り成す渓谷美と、東京の水ガメ、小河内(おごうち)ダム。そんなのどかな一帯にも、剣呑な気配が漂いだしている。住民の反対を無視して、リニア新幹線の残土処分場計画が持ち上がり、静かな集落で殺人が起きる。