自身のキャラを逆張りしたバイプレイ
ウエンツ瑛士さんとの音楽ユニット・WaT解散後は俳優としてソロ活動をしている小池さんですが、森に住む愛らしい動物のような笑顔と、パーカー&斜め掛けバッグが似合うキュートさは32歳の今も健在。
が、そのキュートさが、30歳を越えた俳優として必ずしもプラスに働くと限らないのはご承知の通り。ただでさえ渋滞気味の男性アラサー俳優陣。自身の強みをアピールしなければ、40代になった時に第一線に立てているかは微妙です。
そこで小池さんが切ったカードのひとつが「ベイビーフェイスならではの怖さ」。『大恋愛』での演技も、甘いキラースマイルや、持ち前の爽やかさがあるからこそ、役の内面の異常さが際立つワケです。「普通じゃない感」を視覚化するために見せた納豆ズルズル食べからのゲップ芝居や、キュートなビジュアルを逆手にとっての“闇感”溢れるストーカー演技……小池さんが自身のキャラを逆張りしたバイプレイは大成功を収めました。
ミュージカル俳優が映像作品に出るのが難しい理由
続いてピックアップしたいのが『昭和元禄 落語心中』(NHK)で有楽亭助六を演じる山崎育三郎さん。著名な落語家・有楽亭八雲(岡田将生)のもとに、刑務所を出たばかりのチンピラ・与太郎(竜星涼)が弟子入りしたことをきっかけに、八雲とかつての盟友・助六(山崎)との因縁が次第に明らかに。戦争中から平成まで時代を行き来しながら物語が紡がれていきます。
山崎さんといえば、日比谷界隈では知らぬ人がいないミュージカル界のスター。ですが、ミュージカル界の売れっ子って、映像作品に出るのがなかなか難しいのです。なぜなら、人気俳優は劇場の都合で2年から3年前にスケジュールを押さえられてしまうから。また、大劇場での芝居に慣れると、指1本、視線ひとつで感情表現が成立する映像の演技に順応するのも一苦労。なので、彼もここ数年は「ミュージカル界のスター」の看板を背負った上でドラマに出ていた印象。ですが、本作ではっきり「化け」ました。
泥くさくて直情的。圧倒的な華と明るさとで落語界の階段を駆け昇った天才・助六。が、芸者のみよ吉(大政絢)と駆け落ちし、捨てたはずの落語に絡め取られて死んでいく。
個人的にはこの作品が今期で一番刺さる“恋愛ドラマ”だと思っています。BL云々ではなく、八雲と助六は互いの“芸”を誰よりも愛し、妬み、恋い焦がれ、体以外……相手のすべてを命さえ賭けて欲し合った仲だから。この作品の山崎さんを見て「ああ、なんか急に歌いだす舞台に出てる人ね」なんて思う人はいないはず。「華麗なミュージカル俳優」が「泥臭い役者」に化けたバイプレイでした。