住んで分かったトランプ支持者の実態とは?
「カフェでコーヒーを飲み、飲み屋に行って、街の人たちと雑談しました。住み込んで初めて分かったのは、たとえば田舎の人はガソリン価格で景気を測るんです。『オバマの時は4ドルに迫ったが、トランプになって2ドル17セントに下がったぞ。トランプがいかに凄いかわかるだろ?』なんて言う。CNNやWSJが流すのは遠くの経済ニュース。彼らにとっては、角の工場が人員募集を始めた、という話の方が重要なんです」
一人一人の顔がよく見える。例えばナンシーという女性は、かつてGMの工場で働いたことを生涯の誇りにし、貧困層への転落を恐れる。デイナというカフェの店員は、弟や高校の同級生を薬物中毒で失っている。
「街の衰退に打ちひしがれていた労働者は、大統領選でのトランプの言葉に心震えていた。自由貿易や環境問題もいいが、見捨てられた私たちの声を聞いて欲しい、というのが彼らの根底にある気持ちだと思います」
トランプ礼賛本にならぬよう、白人民族主義団体やリベラル派の集会での声にも耳を傾け、一方でトランプの数々の嘘についても批判的に検討を加えている。
先の中間選挙では、民主党が下院の過半数を取った。しかし、金成さんは言う。
「私が取材したラストベルトのトランプ支持者の7~8割の支持は揺らいでいない。20年の大統領選でも引き続き、ここが勝負を決する地になるでしょう」
『記者、ラストべルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂』
積極的にトランプを支持した元民主党支持者、消極的支持者、トランプに投票したことを後悔する人、就任後に積極的に支持に回った人――大統領選が終わり、日常に戻ったラストベルトの人々は、いま何を思うのか? 労働者の街に住んだ記者が丹念に声を拾い上げて見えてきた、もう一つのアメリカのリアルとは?