アポなし殴り込み男マイケル・ムーアが、再び吠える。ブッシュ政権を痛烈に批判した自らの代表作『華氏911』のタイトルをもじった『華氏119』の標的はドナルド・トランプ(11月9日はトランプの当選が確定、勝利宣言した日)。
映画は、トランプが立候補することになったのは歌手グウェン・ステファニのせいだというところから始まる。ムーアの抜群のユーモアセンスは健在だ。自分と同じテレビ局の別の番組に出演していたステファニのギャラを知って、トランプは激昂した。
「もちろん、彼女は何も悪いことはしていないよ。女が自分よりギャラをもらっているということが、トランプの倫理に反していただけ。でも、それがきっかけで、彼は自分がどれだけアメリカから愛されているかを示す方法を考え始めた。そして、大きな集会で、それを言った。その時は本気じゃなかったのに、舞台で大勢を前にすると、ナルシストの彼はその気になってしまったんだよ」
そのくだりを過ぎると、映画は思いのほかシリアスになる。本当はもっと笑える映像もあったのだが、「そもそもがトランプを笑う映画なのに、笑いを入れすぎると気が散る」と判断したせいだ。今作の編集作業中、ムーアは、あることを発見している。