「トランプ支持者は“高卒のブルーカラー層”などと一括りに形容されます。でも私は、彼らを具体的な人として描き、肉声を記録として残したかったんです」
金成隆一さんは2016年の大統領選の震源地となったアメリカ中西部の「ラストベルト」(=さびついた工業地帯)で、選挙前からトランプ支持者たちを取材し続け、前作『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)にその成果をまとめた。本書は、その後のラストベルトに「住み込んで」「定点観測」した異色作である。
「15年12月から通い続けて、友達も増えました。熱狂的なお祭り=大統領選が終わった後の彼らの日常はどんなものだろう。それを目撃したい、そしてここまで来たら、彼らのコミュニティに入って、同じ物を食べたい、と思ったんです」
NYの国連本部担当の傍ら、17年10月から3カ月、オハイオ州の、かつて製鉄業と製造業で栄えた街にアパートを借りた。一帯は貧困率35%、薬物依存の犠牲者が相次ぐエリアだ。