昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

2018/12/21

「藤井くんは羽生さんとは異質の強さですね」

 平成将棋界の主役は羽生であったが、2018年になって時代の節目を象徴するような出来事がいくつも起こった。15歳の藤井聡太が全棋士参加棋戦で史上最年少優勝、31年ぶりにタイトルをひとつずつ分け合う「群雄割拠」の再来。

 将棋を取り巻く環境は大幅に変わった。

朝日杯、新人王戦と2018年に2つのタイトルを獲得した藤井聡太七段 ©文藝春秋

「いまは昔に比べると棋士が忙しいでしょう。対局、研究、解説やイベント。人気棋士になると、スケジュールがタレント並なんじゃないですか。メールで情報交換が盛んになり、さらに将棋ソフトに解析させるから、ますます情報のサイクル、スピードは速くなり、そのため研究時間がふえる。でも、将棋が強くなるのが、受験勉強みたいに『覚えること』になってしまったら、ちょっと寂しい気がする。

 対局以外の仕事がふえるのは、いいことだと思うんです。いろんな人と会えば、視野が広がるし、考え方に幅もできてくる。ただ、そのために人間が丸くなるだけじゃなく、勝負の心構えまで丸くなってしまうんじゃないか。私みたいな年寄りは、そんな余分な心配までしちゃう(笑)。その点、米長(邦雄)さんは、あれだけマスコミにサービスしながら、マスコミに呑み込まれず、我を張り通したのは、さすがですね。

 おおまかにいえば、戦後の将棋界は大山時代、中原時代、羽生時代と続いた。トップに立つ棋士たちの才能はほぼ変わらない。そのなかで、一時代を画した3人に共通しているのは、なにか――それは根源の生命力じゃないかと思ったりするんです。ギリギリのところで、もちこたえる生命力を備えているような気がする。まあ、ほんとのところは、だれにもわからないと思うんですけどね。

 藤井聡太七段はどうなのかな。素人に将棋のことはわかるはずもないんですが、この少年は常に冷静で、リードを奪って、そのまま押しきる将棋が多いように思える。羽生さんが10代のころは、序盤で悪くなっても、終盤の土壇場で逆転勝ちする将棋が多かった。『羽生マジック』なんていわれたけれど、死にもの狂いで勝ったような印象もあるんです。藤井少年には、そういった部分がない。羽生さんとは異質の強さですが、とにかく文句なしに強い。天才は時代がつくるといわれますが、どんな棋士になるか、楽しみに待つしかないですね」

©深野未季/文藝春秋

この記事の写真(10枚)

+全表示

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。詳細はこちらから。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春将棋をフォロー