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「私はマイメロだよ~」発言には続きがあった

 宇垣アナはアナウンサーになって以来、求められるイメージと本来の自分とのギャップに悩まされることも多かったらしい。そのことは、昨年7月にサブカルチャー誌『クイック・ジャパン』で発表したコラムにより人々の知るところとなった。「あなたに名前で呼ばれたい」と題するそのコラムは、《自分のことをウガキミサトだと、キー局のアナウンサーだと、そう思うから辛いのだ。(中略)そんなときは、「私はマイメロだよ~☆ 難しいことはよくわかんないしイチゴ食べたいでーす」って思えば、たいていのことはどうでもよくなる》と書き出されていた(※3)。これが今年に入ってSNSで拡散され、世の中の不条理への対処術として大きな反響を呼んだ。

 ただ、このコラムを続けて読んでいくと、《でもそうやって自分自身を手放して、人生をRPGみたいに生きているくせに、時々たまらなく名前を読んでもらいたくもなる》との一文に出くわす。彼女いわく、名前はその人そのものであり、だから他人に対してもできるだけ名前を丁寧に呼ぶようにしているという。

《私のついているアナウンサーという職業は仕事上、多種多様な人と出会う。その一人ひとりの名前を呼ぶたびに、この人と私はどういう関係になりたいのか考えてしまう。(中略)

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 もっともっと心の壁がなくなればいいと願って、ちょっとした質問の隙間でも何度となく名前を呼ぶ》(※3)

今年9月、警視庁三田署の一日署長に就任した宇垣アナ ©共同通信社

「転生でもしない限りほかの仕事をすることはない」

 ここからは宇垣アナのコミュニケーションに対する強い欲求が伝わってくる。別のところでは、今後も人前に立つ仕事は続けていくつもりだときっぱり口にしている。

《基本的に目立つことに抵抗があるので、穏やかに生きたい願望もあるんですけど(笑)、転生でもしない限りほかの仕事をすることは、たぶんないですね。今の人生を選択した自分は、選択しなかった人生に対して責任を負うべきだと考えているので。一度、人の前に立つ仕事に就いたからには、この生き方をまっとうするつもりでいます》(※1)

入社5年目の宇垣アナ。2019年に退社するのか注目される ©文藝春秋

 童顔で、内向きな性格が目につきがちなので誤解もされやすいのだろうが、こうした彼女の発言を読むと、思った以上にプロ意識の高さを感じる。

 退社報道が出て初めての生出演となった12月25日の『アフター6ジャンクション』では、本人から何らかのコメントがあるものと予想されたが、フタを開けてみればとくに言及はなし。代わりに、番組の相方である宇多丸が冒頭、彼女の登場を前に「現時点では話せないこともたくさんある」などとフォローしていたのが、2人の信頼関係をうかがわせ印象的だった。おかげでその後、宇垣アナは前週に休暇をとってドイツへ旅行した話などをいつもどおり自然体で語り、私たちリスナーもすんなりとそれを聴くことができた。

 おそらく、もし報道どおり退社するのであれば、しかるべきときにまたあらためて本人の口から語られるのだろう。これまでの発言から推察するに、宇垣アナにとってフリーへの転身は、いきなり新天地に飛び出すというよりは、現在のラジオの仕事などの延長線上にあるものなのかもしれない。たとえ立場が変わろうとも、彼女がその独特の視点と言葉で、趣味の世界や人間関係の機微などをどう伝えていくのか、今後も楽しみにしたい。

※1 『B.L.T.』2018年7月号
※2 『BRODY』2018年12月号
※3 『クイック・ジャパン』Vol.132