プラトンの『ソクラテスの弁明』、カントの『純粋理性批判』、サルトルの『存在と無』など、古代から現代までの哲学書50冊を網羅的に、高校生でも読めるような語り口で解説した本が売れている。著者はアカデミックな哲学の世界ではまったく無名の若者。大学院で哲学者・竹田青嗣に師事したのち、在野で思索を続け、インターネットで勉強の成果を地道に発信してきた。その活動に編集者が目を留め、執筆を依頼したという。
「誰もが名前を知っていて、でもほとんど読んだことがない古典の内容をわかりやすくまとめた本を作りたいという気持ちが以前からあったんです。でも、名の知れた先生にいきなりお願いしてもまず難しいだろうな、と。そんなとき著者のサイトを知って、これだけ熱心に情報を発信されている方なら、そんな無茶な企画もお願いできるんじゃないかと思ったんです」(担当編集者)
好調な売れ行きには、編集者の工夫も光る。
「原稿の内容には自信があったので、表紙で勝負をかけたんです」(担当編集者)
新書ではおそらく例のないティファニーブルーの地に、若者に人気のマンガ家・横槍メンゴの美少女画を大々的にあしらった表紙。「読まずに死ねない」という挑発的な語句も相まって大いに目を惹く。読者層も下は10代から上は70代まで幅広いという。ポップな哲学書の動向に要注目だ。
2016年3月発売。初版6300部。現在14刷6万9000部