本書は一九一〇年代から百年にわたる大統領や米連邦政府の閣僚たちと、銀行家たちの密接な関係とその功罪を記したものだ。一九〇七年に起きた恐慌を機に、アメリカは現在の連邦準備制度を発足させたが、それは当時の大銀行家モルガンはじめニューヨークの銀行家たちの影響を色濃く受けたものだった。以降、世界大戦、戦後期を通じて銀行家たちは政府と密接に繋がってきた。
なかでも現代に通じるのは七〇年代以降のことだろう。本書によりクリントン時代からオバマに至る間の大統領とゴールドマン・サックス(GS)の癒着を理解することは特に重要だ。
著者はGS会長からクリントン政権の財務長官になったボブ・ルービンを、大統領を利用してウォール街に最大の利益誘導をした人物として描いている。商業銀行と投資業務の分離を定めたグラス・スティーガル法を撤廃させたのだ。ボブ・ルービンと彼をクリントンに引き合わせたとされるケン・ブローディー(輸出入銀行総裁)は、私が三十代でGSに勤めた当時世話になった上司だった。彼らは人を使う側であっても、決して誰かに仕えるような人物ではなかった。
その後、空前のバブルは二〇〇八年、「自爆」した。GSもシティグループも納税者の資金により救済されたが、大銀行の幹部は誰一人として牢屋には入れられなかった。
トランプ政権には元GSと、元ロスチャイルドの銀行家たちが入り、財務商務両省、国家経済会議の長、そしてホワイトハウス内で日々大統領にアドヴァイスする側近になる。彼らがこれから為そうとすることを占おうとするとき、本書は十分な示唆を与えてくれるだろう。
政権と銀行家たちの蜜月は続いている。著者は「われわれの選択は単純だ。われわれがこの同盟を打ち砕くか、それとも彼らがわれわれを打ち砕くか、二つにひとつなのだ」という言葉で本書を締めくくった。
Nomi Prins/ニューヨーク・タイムズ紙やフォーブスに寄稿するジャーナリスト。CNN、BBCなどにも出演している。過去にGSやリーマン・ブラザーズ等大手金融会社に勤務したことがある。
みたにひでき/1953年生まれ。投資銀行家。84年から91年までGSに勤務。主著に『ゴールドマン・サックス研究』などがある。