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紀州のドン・ファン、尾畠春夫さん、富田林脱走……

 

おぐら 頂点まで上りつめたあと、孤独になった人と言えば、紀州のドン・ファン(野崎幸助)は外せないですよね。

鹿島 山根(明)元会長で隠れちゃいましたけど、この人も全国的な知名度はそこまでなかった「アマチュアおじさん」の一人。野崎さんの売りは「4000人の女を抱いた」っていうことでしたよね。野崎さんは、日刊ゲンダイでずっと連載していたんですよ。

おぐら へえ。エッセイ的な連載ですか?

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鹿島 女を抱いた話を毎週1話ずつ。僕はそれを読むのが大好きだったんです。最後にオチの言葉をつけて。日刊ゲンダイは一面で「安倍ペテン」だとか毎号怒っているんだけど、中を見るとおじさんの夢を全部実現している人の話が出ているところが良いんです。ところが、ドン・ファンがこういう形で亡くなって、そうするとリアルな話や聞きたくない情報がどんどん出てきて、おじさんの幻想が崩れていったんですよね。

鈴木 亡くなってから、実はもうセックスができる状態じゃなかったとか、介護が必要だったとか、色々出てきましたよね。

鹿島 僕から言わせれば、あれだけ夢見て応援していたプロレスラーが、ガチな話、本当は弱かった、みたいなことを見せられているみたいでね。

 

鈴木 ドン・ファンの人生が、ハッピーエンドでなかったことが、示唆的ですよね。

鹿島 結局4000人抱いても、愛犬イブちゃんをどれほど可愛がっていたか、「目の中に入れても痛くない」って言っているわけですよ。イブちゃん亡き後に体調を崩した。ここも切ないところです。

おぐら 紀州に続いて地方のおじさん、というかおじいさんですけど、スーパーボランティアの尾畠春夫さん。大分県在住です。

鈴木 顔つきがどんどん変わって、神様っていうかありがたい感じが出てきました。1カ月くらい経って、ネガティブな情報が出てくるかと心配しましたけど、それもないですし。

 

おぐら すぐに『情熱大陸』が密着していましたが、ただお風呂に入っているだけで福がにじみ出ていましたよ。

鹿島 尾畠さんは、流行語大賞のトップテンに入ったのに受賞を辞退したり。そこがすごいんですよ。

おぐら それから、まだ30歳と若かったですけど、大阪の富田林警察署を逃走して日本一周の旅を装っていた樋田淳也容疑者(逃走当時)がいましたね。強制性交や、強盗致傷などの容疑で逮捕されて、勾留中に逃亡しました。

鹿島 樋田容疑者よりむしろ、逃がした側が今、大変なことに。留置の担当者だった40代の男性巡査部長がスマホでアダルトサイトを見ていたら、その隙を見て逃走したことがニュースになってます。僕、実は富田林市の隣町に住んでいたことがあるんですけど、平和な雰囲気の地域なんですよ。

おぐら 「日本縦断中!」と書かれたプレートを持って記念撮影にも応じて、しかもその写真がネットでも公開されていた。この時代に警察と情報化社会の目をかいくぐるって、ある意味すごい才能ですよ。

鹿島 あれは、神様の意地悪だったと僕は思います。富田林という土地に、あのような人を放り込んだら、それは逃がしてしまいますよ。