謹賀新年。節目の年だ。プロ野球は「平成最後の開幕」で始まり、「新元号最初の優勝チーム」を決することになる。僕が応援している北海道日本ハムファイターズは金子弌大、秋吉亮、谷内亮太、王柏融、ハンコック、バーベイトといった移籍組に加え、吉田輝星らルーキーのユニホーム姿が見られるという、楽しみなシーズンを迎える。

 その一方でベテラン田中賢介との惜別イヤーでもある。ファンは優勝を賢介引退の花道にしたいと意気込んでいる。ファイターズは北海道を本拠地にして以来、「3年に一度、リーグ優勝&10年に一度、日本一」のペースを守っており、その法則(?)でいけば2019年シーズンはパ・リーグ優勝の順番だ。秋にはぜひ、栗山監督と賢介の胴上げが見たい。

 という感じの話はこれからキャンプ、オープン戦とチームが仕上がっていく過程で何度も語られるだろう。また今ここで「レアードに代わってサードの定位置をものにするのは誰か?」を考えてもあんまり意味がない。それはこれから具体的に目にするからだ。「○○がサードだ」と言って、その○○がキャンプでコンディションを崩すかもしれない。そういうのは現実に即して見ていくしかない。

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 せっかくお正月なので、もうちょっと大枠を考えてみたいと思う。僕はここ数年、野球の質的変化を感じている。

2019年シーズン終了後に、現役を引退する田中賢介 ©文藝春秋

2019年のプロ野球は間違いなく「ホームラン時代」だ

 プロ野球は例えばリクエスト制度であるとか、投手の二段モーション解禁、捕手のブロック禁止といったルール変更によって質的変化を余儀なくされる。ルールというのはモノサシだから、公明正大であれば変更して構わない。「決められたことを守る」という小学校低学年のホームルームみたいな感じから、「みんなでルールを考える」「必要があれば議論して変えていく」という段階にすすむのは好ましいことだ。但し、公論は興(おこ)してほしい。なし崩しに変えて、不都合が生じたらなし崩しに元に戻すというナアナアはよくない。モノサシが伸び縮みするからだ。

 が、制度面のそれは僕らファンにもわかりやすい。ストライクゾーンの広さのように微妙に変更されていくケースもあるが、大概のことは見ればわかる。プロ野球は衆人環視のもとで行われるのだ。ある日を境に球審が二段モーションをボークに取りだしたら、おいおい何だよ、と騒ぎになると思う。

 その一方で、ブラックボックス化してわかりにくいこともある。いや、よく考えればわかるのだろうが、見てる瞬間は飛び上がってハイタッチしたり、反対に頭をかきむしったりして、それどころじゃないというか。

 話はホームランに関することなのだ。

 要点を先に言うと、今のプロ野球はホームランをつくっている。たぶん米球界の「フライボール革命」とパラレルな次元で、ホームランは要請されているのだと思う。僕らが目にする2019年のプロ野球は間違いなく「ホームラン時代」だ。どの球団もそれを前提にチーム編成し、戦略を練っているはずだ。

急増したパ・リーグ年間総本塁打数

 可視化されてる部分にも、ホームランが要請されている証左がある。ラッキーゾーンの流行だ。ヤフオクドームはかつて外野の広いピッチャーズ・スタジアムの典型だった。それが「ホームランテラス」ができてからはホームランの出やすい、打者有利の球場に変わった。今シーズンはZOZOマリンに「ホームランラグーン」が新設される。パ・リーグの1/3の球場がラッキーゾーンを設置するのだ。これは間違いなく野球を変える。

 が、それだけでなく、可視化されない部分にも理由があるはずだというのが本稿の主旨である。パ・リーグの年間総本塁打数の推移をご覧いただきたい。

 2010年、742本
 2011年、454本
 2012年、427本
 2013年、597本
 2014年、623本
 2015年、647本
 2016年、628本
 2017年、782本
 2018年、852本

 2011年&12年がガクッと落ち込んでいるのは飛ぶボールが問題になり、反発係数を低く設定したいわゆる「統一球」が導入された2年間だ。翌2013年、(なし崩しに)再び飛ぶボールに仕様変更され、そこからはおおむね右肩上がりに増えてきたと言っていい。2018年シーズンの852本は、「統一球」シーズンのざっくり2倍近い数だ。

 ※2013年、「今年のボールは飛ぶ」と評判になったが、NPBはメーカーのミズノに対し「ボールの仕様変更は公表しないでほしい」と要請、事実を隠蔽し、ことが大きくなってから渋々認めた。

 この数字は何を物語っているのだろう。ヤフオクドームの「ホームランテラス」だけが理由でないことは確かだ。打撃技術やデータ解析の向上? それも考慮したい。が、率直に言って増えすぎている。年間、852本は衝撃的だ。