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ホームラン時代にファイターズはどう挑むのか

 僕は「飛ぶボールよりもっと飛ぶボール」が使われている気がする。関係者に尋ねてみると「ケージの後ろに立つとインパクトの瞬間がぜんぜん違う」んだそうだ。僕はケージの後ろに立つことはできないけれど、なるべく早めに球場に行ってフリーバッティングを観察するようにしている。ビジター球場ならファイターズの打撃練習が見られる。また2軍球場は野球が近いから「ケージの後ろ」の感覚をイメージできる。

 といってファイターズの選手がカキーンとかっ飛ばすとやっぱり単純に嬉しくなってしまうのだ。「ボールが飛びすぎる」と問題意識を抱えるより、「よっしゃ、清宮これで6本め!」なんてウヒョウヒョしてしまう。ここがファンの難しいところだ。そのウヒョウヒョを見透かされて、誰なのか黒幕のような人物に「ホームラン時代」を演出されてしまう。

 いわゆる「統一球」が導入されて、ホームランが激減した2012年、ファイターズは栗山新監督を迎え、リーグ優勝を果たしている。この事実は面白いと思う。ファイターズは基本、ディフェンスのチームなのだ。広い札幌ドームを本拠地に投手は低めを丹念に突き、いい当たりをされても俊足の外野手がアウトにする。足でかきまわして1点をもぎ取り、少ないリードを継投で逃げ切る。つまり、ボールが飛ばないほうが有難いのだ。

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 僕はずっと「2011年&12年のボール」なら例えば斎藤佑樹はもっと勝っていたと思う。あんな窮屈なピッチングをせず、低めを打たせればいいのだ。左中間、右中間の火の出るような当たりを打たれ、全部捕ってもらえた。あの頃、小久保裕紀や小笠原道大が打っても打ってもスタンドインしなかったのをファンならご記憶だろう。

 今年の影の主題は「ホームラン時代にファイターズはどう挑む?」ではないかと思うのだ。ディフェンス野球の軸はブレないと思うが、同時にもっと打ち勝つ試合もつくっていきたい。清宮幸太郎の成長、王柏融のアジャストはどうしても必要になる。また救援陣の仕事も重要だ。試合後半のヤマ場、ランナーがたまって、ラッキーゾーン球場、飛ぶボール、相手打線のスラッガーという条件で、必殺の仕事が求められる。秋吉亮を獲得したのはそこのところじゃないか。

ホームラン時代に成長が期待される清宮幸太郎 ©時事通信社

 選手個々の物語と別のところに、見えないドラマがある。それは「ファンは年間どのくらいホームランが出れば喜ぶか」を算定するマーケティングのような作用だったりする。シーズンが始まれば僕らは一投一打に夢中になってしまう。とてもその一投一打の背景にまでは想像が及ばない。

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