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中国の地方都市で「世界なんとか大会」が大増殖している理由

ハッタリでも時流に乗らなければいけない

2019/01/14
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「世界VR産業大会」とはいえ、外国企業のブースは……

 かくして今までパッとしなかった南昌が、「VRといえば南昌」になったわけです。その後、世界最大級と称するVRテーマパークや、VR科学博物館、VR/ARの学習施設が登場しました。VR産業基地も建設中ですし、南昌市政府によるVR/AR産業発展のための政策サポートも発表されました。

 南昌にVR関連サービスの開発能力がどれだけあるかは未知数ではありますが、「VRといえば南昌」としたことで、南昌市民が誇りを持ったかもしれません。地方活性化の一つの方法としてはいいのではないでしょうか。

中国共産党も「VR」に!? ©山谷剛史

 しかし、「世界VR産業大会」とはいいますが、外国ブースに出展していた企業は私がガードマン兼何でも屋を務めた日本ブースの数社に加え、韓国企業などごくわずか。他にはアリババ(阿里巴巴)などのネット企業や、ファーウェイ(華為)やレノボ(聯想)などのハードウェア企業、チャイナモバイル(中国移動)などのキャリア企業をはじめ、中国の大中小様々な規模の企業が参加しました。

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 すなわち中国の業界関係企業をメインにしても、参加した外国企業にスピーチさせれば、「世界なんとか大会」が実現できるという仕組みです。

この手のイベントは中国全土で年間30以上あります

 中国の「世界なんとか大会」でもっとも著名な催しに、毎年秋に浙江省の杭州に近い烏鎮で開催される「世界インターネット大会」があります。

「世界インターネット大会」とは言いますが、中国の名だたる企業のトップに加え、政治家においてはアジア・アフリカなどの第三世界の国々の官僚などが主に参加し、加えて日米などの西側の一部の企業が参加する、そんなイベントです。「世界インターネット大会」は、中国発の「自国のインターネット環境は自国が決める」という中国流インターネットの進む道について発表し確認する場であり、中国各社のトップが一堂に会するのを見られて、参加企業であればお近づきになれるイベントです。

昨年11月に北京で開かれた世界インターネット大会 ©AFLO

 ほかにも中国発の「世界なんとか大会」や「全球(グローバル)なんとか大会」といったイベントは中国全土で年間30以上あります。全部は挙げられませんが、中国を代表する大都市では上海の「世界クラウド大会」「世界人工智能大会」、北京の「世界ニューメディア大会」「世界ロボット大会」があります。それ以外の都市においては、四川省成都の「世界ドローン大会」、湖南省長沙の「国際ブロックチェーン大会」、吉林省長春の「国際二次元コード産業発展大会」、海南省海口の「世界シェア大会」、寧夏回族自治区銀川の「世界スマートシティサミット」などが挙げられます。

 四川省成都の「世界四川料理大会」なんてイベントもあって、「世界を冠する必要はないんでないの?」とツッコミの一つも入れたくなります。

「中国人の自己満足」にも見えそうな中国発の「世界なんとか大会」ですが、大増殖する背景には「中国がなんとしてもIT産業を世界トップクラスのレベルに持っていきたい」という思惑があるわけです。「世界なんとか大会」の多くがIT系のイベントであり、所管する工業和信息化部(工信部)など中国政府各省庁が各イベントに名を連ねているのです。