文春オンライン

中国の地方都市で「世界なんとか大会」が大増殖している理由

ハッタリでも時流に乗らなければいけない

2019/01/14
note

「褒める外国人」をでっちあげる記事も

 外国メディアが中国を高く評価して、中国メディアが有頂天になった記事をしばしば見かけました。例えば、英フィナンシャルタイムズは「中国のキャッシュレス率は98.3%」という適当な発表をしたことがあります。オフィシャル機関であるCNNIC(中国インターネット情報センター)の発表で約43%だというのに、なんと98.3%です。そんなわけがない数字であるにもかかわらず、この外国メディアの「中国スゴイ」記事に新華社が食いついて引用したのです。

 今も中国人は外国が褒めると喜びがちで、実際には存在しない「褒める外国人」をでっちあげる記事もありました。登場する日本人の名前がおかしくて気づいたのですけれども……。外国で評価されると喜ぶのは、日本特有現象ではないわけです。

 話を戻します。同じように、中国がひとりよがりで国際舞台で評価されないとなれば、それは中国としては本望ではありません。

ADVERTISEMENT

 そこに日本企業が乗っかるという姿勢も案外重要だと思うのですよ。私が「世界VR産業大会」の日本ブースで何でも屋として対応していたときも、無数の群衆の中のほんの一部ではありますが、日本企業と提携したいという中国企業担当者や、日本のVR業界で働きたいというプログラマーの青年から声がかかりました。日本企業との提携は中国にとってもプラスであるわけです。

こちらは世界ロボット大会の会場 ©AFLO

いきなり提携したいと熱烈ラブコールするくらいでいい

 日本企業の「世界なんとか大会」の活用法としてありがちなのが、「中国市場での感触を感じにいく」という目的です。その気持ちは当然わかります。しかしながら、中国企業の意思決定のスピードが日本企業よりもはるかに早いと言われている中、「世界なんとか大会」の場ですぐさま提携話をしようというスタンスが中国サイドのやり方です。

 ならば声がかかるつもりでブースを出展したいところですし、逆に「世界なんとか大会」を見に行くときには、会場で気になった会社があれば、いきなり提携したいと熱烈ラブコールするくらいでいいのです。

 ITに注力する中国は、ビッグデータやIoTやAIをはじめ、様々なジャンルで5か年計画を立てています。各産業の5か年計画では、「2020年までの産業規模を何千億元規模にする」「世界で先端を行く企業を育てる」「同業者の横のつながりを強化する」「税制を優遇する」「法規制などルール作りを行う」「人材を育成する環境を作る」といった目標が書かれているのですが、その中に必ず盛り込まれているのが「有能な外国企業と提携する」という文言です。

 中国政府各省庁の公式文書で有能な外国企業を歓迎していると書いていますし、日中関係が悪くならない限りは、「世界なんとか大会」に攻めの見学・攻めの展示をしに行ってはいかがでしょうか。

中国の地方都市で「世界なんとか大会」が大増殖している理由

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー