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予約もとれない、魚もとれない……日本で鮨が食べられなくなる日がやってくる

2019年の論点100

2019/02/09

 将来、日本の食文化の象徴である「鮨」が食べられなくなるかもしれない――。そんな現実を実感している日本人がどれだけいるだろうか。理由は3つある。「予約がとれない」「魚が獲れなくなる」「そもそも職人が消える」。

 レストランの予約がとれない現象は今に始まったことではない。「食べログ」などのグルメサイトで、人気上位の鮨店に片っ端から電話をかけてみれば分かる。何しろ、こうした人気店は最低でも1ヶ月待ちは当たり前。最長で1年半待ちという店もある。その日にキャンセルが出たなどの特殊な事情がない限り、当日に予約をすることは不可能だ。

毎月飛行機でやってくる「フーディーズ」

 熾烈な予約争奪戦に拍車をかけているのが、最高の一皿を求めて世界の名店をめぐり、SNSで情報発信する「フーディーズ」と呼ばれる美食ブロガーの存在だ。彼らの多くがアジアや欧米の富裕層で、定期的に日本を訪れては予約困難の鮨店で食事をする。そして、その一部始終をSNS上で公開することをライフワークにしているのだ。なぜ外国人である彼らは予約できるのか。ミシュランガイドの三つ星に輝く鮨店の主人は、彼らは日本人以上に鮨を愛していると語る。「繁盛店になる10年以上前から毎月、飛行機でやってくるんです。鮨の知識も豊富で、食材の産地や季節のネタも日本人以上に知っていますよ。ただ予約のとれない店で食事したことを自慢する輩とは次元が違う」

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©iStock.com

 香港出身のMは界隈では知られた存在だ。年齢と職業は不詳。定期的に都内の人気店を食べ歩いている。彼女が撮り溜めた鮨の画像は貴重な記録だ。ある鮨店の店主は自分が焼き続けた「玉(卵焼き)」を時系列で見せられた時、過去の自分がどれだけ下手だったのかを知って呆然とした。そして、そんな自分の鮨に長年、付き合ってくれた彼女のことを考えると目頭が熱くなると語った。彼女らは職人からの信頼も厚い。フーディーズのフォロワー数は80万人なんてざらだ。彼らがインフルエンサーの役割を果たし日本の鮨は全世界のグルメの憧れの的となる。