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予約もとれない、魚もとれない……日本で鮨が食べられなくなる日がやってくる

2019年の論点100

2019/02/09
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若い職人は給料のよい海外へ流出

 価格が高騰しているのはマグロだけではないことを考えると、回っている鮨以外は庶民には手の届かない嗜好品になることは間違いない。

 華やかに見える鮨の世界。しかし、万年、人材不足に頭を悩ませている。鮨店の主人が集まると、いつも話題になるのは「いい若い子いない?」。鮨の世界では一人前の職人となるまでに最低でも10年を要する。仕事は早朝から深夜まで。職人の「修業」の世界は、お上が定めた労働基準法にはそぐわない。ドイツのマイスター制度のように「徒弟制度」が法律で体系化されていないのだ。

©iStock.com

 職人の海外流出も深刻だ。鮨のグローバル化に伴い、富裕層が集まる世界の都市では「SUSHI RESTAURANT」の新規開店が進む。こうした外国資本の超高級店の職人の給与は年俸800万円。英語など語学もできれば1000万円超も夢ではない。国内の場合、職人が手にする給与はその半分。将来、自分の店を持つ夢を持つ若手にとって、海外への挑戦は資金面でも独立への近道なのだ。有名店で修業した肩書を狙った「引き抜き」も横行していて、職人の争奪戦はグローバル・ビジネスに発展している。日本で鮨が食べられなくなる日は、そう遠い出来事ではないのだ。

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