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なぜシンガポールのお金持ちは「五輪前」に日本の不動産を買っているのか 

結局、いつ家を買うべきか

2019/01/28
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 シンガポールに20年以上住んでいる日本人の金融関係者によると、「1ヶ月など短期間に数千万円含み益が出た時代もあって、同僚と一緒に不動産投資に熱中した」という時期もあったそうです。

 シンガポールで一代にして富裕層にのし上がった層の多くは不動産を何回も転がしてきた人達が多いのです。自国だけではなく、オーストラリア、イギリスなど不動産市場が整備され、投資をしやすい海外に目を向けている人たちも多く、海外の不動産投資に慣れています。そのため、物件を見ずに決めることもよくあるのです。

アジアの不動産市場から見ると、日本の不動産は割安

 アジアの表面賃貸利回り(global property guide)のランキングを見ると、1位インドネシア(7.40%)、2位フィリピン(6.13%)、3位カンボジア(5.33%)、4位タイ(5.13%)、5位マレーシア(3.72%)、6位日本(2.66%)、7位シンガポール(2.54%)、8位香港(2.35%)、9位中国(2.10%)、10位台湾(2.06%)の順になっています。

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Asia: Gross rental yields (%)

©iStock.com

 日本の不動産は先進アジアの中では利回りがよく、「東京で利回り4%」と聞くと、旨みを感じるようで、日本人の富裕層の他にも、シンガポーリアンなど外国人富裕層からの人気が高いのです。

 台湾、シンガポール、香港など成熟しきり、割高感があるアジア市場と比べると日本の不動産の利回りはリスク対リターンが良く映ります。更に少額から投資ができるという利点も大きいです。都心のワンルームマンションは3000万円前後からあり、シティエリアのファミリータイプだと2億円前後するシンガポールの不動産と比べると気軽に手を出しやすいのです。シンガポールではワンルームマンションのような小ぶりで安い金額の不動産を探すのが至難の業。価格が比較的安いからこそ、即決で現金購入する人も多いのです。

 日本以外のアジアへの不動産投資先としては、フィリピンやタイなどが高い利回りが期待でき、人気が高くなっています。先日、タイの高級物件の話をインド人の金融業者から持ちかけられたのですが、一等地で3億円もするコンドミニアムの話でした。3億円にもなると、融資を受けないと庶民には手が届かない金額です。タイとはいえ、超富裕層向けの物件は、もはや日本の六本木ヒルズを超えるような値段になってきているのです。

 また、シンガポールの国土の大半は国有地であり、物件の所有権もほとんどが99年などの長期間のリースホールド(定期借地権)となっています。日本の不動産の多くは外国人であってもフリーホールド(永久所有権)の物件を購入することができるので魅力が高いようです。