昨年12月30日に中国国営通信社・新華社が報じたところによれば、ナイジェリア南部で27歳の中国人の若者、李満虎(Li Man hu)さんが地元部族の「酋長」になった。酋長就任の第一報を聞いた李さんの第一声は「なんで俺が?」だったという。
……とまあ、あらゆる意味でツッコミどころしか見つからない話なのだが、どうやらフェイクではなく事実らしい。李さんはアフリカで建設・土木インフラ整備をおこなう中国の国有企業・中地海外集団(CGCOC Group)ナイジェリア公司で働く入社3年目の社員で、現在はナイジェリア南東部のクロスリバー州エタング(Etung)地区に駐在中だ。
「酋長」は部族や村単位の伝統的な権力者
クロスリバー州は隣国カメルーンとの国境地帯。李さんはCGCOCが請け負う国際橋梁建設プロジェクトを切り回しており、200人あまりのナイジェリア人労働者を指揮しつつ、現地コミュニティや地元の土侯(中国語原文では「土王」)との折衝をおこなっている。
彼が酋長への任命を伝えられたのは12月なかばで、中国系メディアによれば、土侯側からたっての要請があり、現地助手を通じて突然話が降ってきたらしい(なお「酋長」という呼称は中国語の原文ママだ。ナイジェリアの現地メディア『tori.ng』では「a chieftain of a local tribe」と訳語が充てられており、日本語では「部族長」くらいの意味である)。
ナイジェリアはもともとイギリスの植民地だったが、北部と南部の分断が激しく、部族抗争や内戦が絶えないハードな近現代史を歩んできた国である。
公的な政府機関はもちろん存在するが、それとは別に比較的広い範囲に権威を持つ土侯と、その下で部族や村の単位で権威をおよぼす酋長という、伝統的な権力者が存在する。現地の人たちは、小さなトラブルは公的機関ではなく酋長のところに持ち込むようであり、酋長は人々からとても尊敬される存在だという。27歳の中国人青年・李さんはそういう凄い人になってしまったのだった。