1965年作品(87分)/東映/2800円(税抜)/レンタルあり

 今回は先週の一作目に続き、「網走番外地」シリーズの二作目となる『続・網走番外地』を取り上げる。

 ただこの映画、「続」とは付けられているが、実は何も続いてはいない。後のシリーズ作品ではその飛躍ぶりがさらに強烈なことになってくるが、何も知らずに「続きもの」だと思って観てしまうと正直言って面食らうことだろう。

 なにせ、高倉健が演じる主人公・橘真一、口から出まかせの田中邦衛、悪役の安部徹、陰から橘を助ける鬼寅親分(嵐寛寿郎)ら「お馴染みメンバー」が毎回のように登場するにもかかわらず、前作で起きたことは完全に「なかったこと」としてリセットされ、作品が更新される度に新たな物語が展開されていくのだ。細かいことは気にしない。楽しければそれでいい。それが、このシリーズの楽しみ方といえる。

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 ただそれでも。続けて観ると、この一作目と二作目とのギャップにはいつも唖然とさせられる。どんなシリーズ作品でも、たとえ設定がリセットされることはあっても、作品の演出タッチだけは大きく変わることはない。『13日の金曜日』がいきなりミュージカルになったり、『男はつらいよ』がいきなりバイオレンスになったり、『ランボー』がいきなりコメディになったり——。ありえないことだ。

 が、その「ありえないこと」を平然とやってのけてしまったのが、本作だ。

 前作は多少のコミカルな要素はあったものの、基本的には哀愁が漂うシリアスなドラマだった。が、本作は全く違う。小洒落た感じすらある、明るいコメディ映画なのだ。

 しかも、高倉健が徹底的に「笑わせ」にかかってくる。

 網走刑務所を無事に出所できた橘だったが、すぐに金を全額すられてしまう。止む無く旅先の親分に頼みこみ縁日の露店でテキヤをすることになるのだが、ここで売らされるのが、なんとパンティ。

 あの高倉健が、「見てくれよ! この色、デザイン!」と売り込んだかと思うと、今度は「こんな乱暴なことされてもだ、え、絶対に切れない」とパンティを引きちぎる実演をしているのだ。しかも喜々として。

 さらに、敵地に乗り込んでも返り討ちにあい、服を脱がされスチームサウナに閉じ込められて汗だくになって悶え苦しんだり。とにかく悪ふざけと思えるくらいのコミカルさを終始見せつけてくる。最後に安部徹と戦う際ですら、祭の盆踊りの最中にひょっとこの面を被って踊りながら——だった。

 未見の方は、ぜひ一作目と二作目を続けてご覧いただき、「なんでもあり」の番外地ワールドに驚愕してほしい。

泥沼スクリーン これまで観てきた映画のこと

春日 太一

文藝春秋

2018年12月12日 発売